「んっ…は、ぁ」
「もう気持ちよくなっちゃった?」

 重なるくちびるから生まれる温度は身体の内側に伝染するほど熱い。それでも、私は思考回路が働かなくなる彼のこのくちづけが大好きだ。啄むように軽い音を立てるやわらかいキスも、熱と熱が交じり合う陶酔してしまうようなキスも、どちらも。キスをされながら触れられている髪はきっと艶を増す。
 つい息が漏れると、彼はからかうような笑みをそのキレイな顔に浮かべた。その表情が恍惚に満ちている上に、真実なので私は何も言えなくなる。

「ひゃっ…!」

 無言を答えだと受け取るかのように、彼は次の動作に入る。ひんやりとした感覚が脚を彷徨う。太腿を撫でるその手つきは、きっと序章に過ぎないのだろう。わたしの全身の肌を舞台にでもするかのように、彼の大きな掌や指やくちびるがゆるやかに踊る。ショーツのラインを彼の指先が這うように撫で始めるのに、肝心の部分にはなかなか到達してくれない。思わず身体が疼いてしまい、無意識に脚を動かすと、彼はふっと笑う。その笑みが妖艶過ぎて見惚れてしまったせいか、彼の指の行方から意識が少しだけ逸れた。その瞬間を狙ったのか、ショーツの上からやんわりと刺激を与えられる。次にやってくる快感に期待と不安の矛盾が、辛うじて働いている頭の中を支配した。気持ち良すぎて、壊れてしまうのではないかという不安。もう何回も経験している筈なのに、不思議と慣れることは無い。

「ぁっ…」

 彼の指がショーツの中に侵入してくるのを結局は甘受してしまう。敏感な部分を一瞬触れられ、思わず声が漏れると耳元で「可愛い」と囁かれた。ついでだとでも言うかのように耳殻に彼の舌が這い、身体がゆるやかな波のようにうねる。直接、全身に響くようなピチャピチャとした水音がショーツの中の湿度をより上昇させ始めた。下半身からも聞こえる水音が、舐められていない反対の耳を覆うようで、眩暈がしそうになる。一番敏感な箇所を何度も往復させるように触れ、声の我慢なんてもう頭に無いくらいに快感を堪能していると、彼の指がゆっくりとナカに挿入された。一本、二本となんの躊躇いもなく受け入れる私の身体もだいぶ彼に懐いているらしい。そこから先、何本入ったのかなんて覚えていない。緩慢な動きを数回繰り返し、穏やかな気持ちよさに浸っていると突如襲ってくる予測不可能な加速。

、ここが好きだよね」
「ぁっ、まっ…やっ…ぁ…!」
「だって、いつも可愛い声聞かせてくれるから」

 緩急をつけたあとは、ひたすら速度が増す。ぴちゃぴちゃと厭らしい水音と羞恥心の欠片もない甲高い声が、ベッドの呻きと同調する。鼓膜が、脳髄が、心臓が、身体が震える。限界のサインを送るように彼の腕を強く掴んでも決してその動きが止まらないことを私は知っているし、止めて欲しいとも思っていない。身体が反り返り、浮遊を体験すると、今度は彼のモノがゆっくりと入ってくる。その瞬間でさえ、無意識に息が零れてしまう。その吐息ごと奪うかのように大きく食べられたくちびるは、熱い。
 脚を持ち上げられ広げられるが、その動作に羞恥心を感じる暇もなく、彼の腰の動きがゆっくりと確実に私に快楽を与える。然し、すべてを知っているかのように蠢くそれは、境界線の付近で輝きを増しながらもなかなか奥へは進んでくれない。

「んっ…た、つやく…ぁっ」
「その顔、たまらないな」

 吐息混じりに囁かれたその言葉はあまりに単純で、胸が弾ける隙も無く、唐突に貫くような衝動に身体は歓びを抱いてしまったらしい。

「…っ、ぁあっ、ぁっ…!」

 その情欲に飲み込まれるかのようにシーツは荒々しい波を立て、ベッドは甲高い声で軋みながら啼いた。


 どうして、彼は毎回違う快感を与えられるのだろう。不思議で仕方がないが、そんなことを考えながら息を整えていると、彼の甘ったるい笑顔と甘美に満ちたくちづけが捧げれる。まぁ、良いかとこの幸せな余韻に浸ることにした。