<高専イメージですがお好きにお読みください>
シャワールームに春の陽気みたいなやわらかな香りがふわふわと舞っている。わたしにとって楽しみなバスタイムは、例えばバスソルトを入れた湯船にゆっくり入ったり、お気に入りのボディソープや良い香りのシャンプーを使うことだけではない。お風呂から出たあと、髪を乾かすまでがわたしのほっこりバスタイム。
「お風呂気持ちかったー」
「はい、湯冷めしないうちにおいで」
まだ出たばっかり、むしろ身体は火照って熱いくらいなのに過保護かなって思うくらいおいでおいでと手招きされた。わたしの部屋に来ると、傑はいつもわたしの髪を乾かしてくれる。美容師さんより上手で早く乾かしてくれる気がするけど、それだけじゃなくて何となく心地好いからわたしはこの時間が大好き。いつもはキャミソールの上にパーカーを羽織ってるけど、今日はいつもより熱いのでそのまま傑の足の間に座りこむ。わたしはただ鏡の前で自分の髪が整えられていくのを見てるだけ。たまに鏡越しに傑と目が合うと少しドキドキして、すぐに目を逸らしてしまう癖はきっといつまで経っても直らない。そんなわたしに気づくと傑はいつも楽しそうに笑っている。
「あれ、シャンプー変えた?」
「うん、季節の変わり目だから変えてみた」
「良い香りだね」
頭を撫でられるみたいにやさしく髪のトップ部分を乾かしてくれたり手櫛をしながら時折触れる手に安心する。髪の毛をもっとキレイにしようとこの前新しく買ったブラシで、あっという間に乾いた髪をブラッシングして終了。ついでに肩のマッサージまでしてくれるからほんとに美容師さんみたい。傑だって日々の任務で疲れてるはずなのに、わたしも傑に何かすると言うと「私が好きでやってるだけだから気にしなくて良いんだよ」と言ってくれるし「と一緒にいれるだけで良いんだよ」とかいつでもあまい言葉をさらりと与えてくれるので、わたしはいつも胸がきゅうっと締まる。
サラサラにしてもらった髪をひとつに纏め、そのままわたしはスキンケアタイムに入る。顔、首、デコルテ、どこも気なんて抜いていられない。むかしはスキンケアタイムなんて面倒以外の何ものでも無いなんて事を思っていたけど、今では楽しい時間になったのは多分傑のおかげなんだろうなと思う。
「わっ…!ビックリした」
「今日いつもよりすごく肌がキレイな気がする」
「分かる?ボディスクラブ使ったんだ」
急にショートパンツから剥き出しになった太ももを撫でられたのでビックリして、顔に塗ろうと思っていた美容液を自分の脚に落としてしまった。その美容液をそのまま塗るように脚を触られ「手つきがいやらしいですよ、傑クン」と言いつつも気づいてもらえたことが嬉しくて悪い気はしない。わたしのスキンケアなどお構いなしに肩まで撫でるように触れてくるけど、その程度はこちらも慣れたものでお構いなしである。けど、そんなわたしに不満を持ったのかショートパンツのウエストゴム部分とお腹をゆっくり撫でながら手を侵入させて来たときは少し身体が動いてしまった。骨盤あたりをゆっくりと撫でられると、流石に反応せざるを得ない。
「つい触りたくなってしまうよ」
「そ、そうなんだ」
火照っていた身体に傑の冷たい手が肌を撫でる度に自分の鼓動が速くなっていくのが分かる。動揺がバレないように平然を装うけど、傑の手の動きは止まる気配は無いしむしろそのまま後ろから抱き締められてしまってるので下手に動けない。背の高い傑は座っても頭いっこ分違うから、よくわたしの頭に自分の顎を乗せてくる。重くて身動きが取り辛くなるけど、離れて欲しくはなくて、何も言えないのはわたしの責任。
「の鎖骨ってキレイだよね」
「そうかな?」
左鎖骨を舐めるみたいに指ですーっとゆっくり撫でられた。今までの経験からこれは良くないなと思って立ち上がろうとしたけど、やっぱり傑の左手が腰をガッチリとホールドしていて動けない。耳元でしゃべられて、その度に息がかかるから、くすぐったさに身を捩らせていると、鎖骨を撫でていた手がキャミソールの肩紐をゆっくりと外し、その大きい掌に肩が包まれた。
「鏡で今の自分の顔、見てごらん?」
自分の顔というよりまた傑と鏡越しで目が合ってしまい恥ずかしくて反射的に逸らしてしまう。「悪い子だね」と耳元で言われると脳が麻痺したみたいな攻撃を受けている感覚になる。顔を逸らしたことで傑のくちびるに近づいた耳がキスをするみたいにやさしく噛まれ、あまい吐息のようなものがつい漏れてしまったことを彼は絶対に聞き逃さない。
顎をつかまれ傑とようやく目が合うと、逃げられないみたいに瞬きさえも出来なくなる。時間にして数秒、何もせず何も言わず、ただ楽しそうにしてる傑と目が合うだけ。そこからくちびるを奪われるまではスローモーション。ついばむようなかわいかったキスが、耳に響くような音になるまであっという間。うっすらと開いてしまったくちびるの隙間に入り込んできた舌が歯列や上顎を器用になぞる。後頭部をしっかり掴まえられて、もう逃げるつもりなんてないのに執拗に口内をぐちゃぐちゃにされる。
「そんなかわいい顔をされてしまったら、もう我慢できないよ」
解放されたくちびるからは言葉にならない吐息しか生まれてこない。扇情的な傑のその眼差しに同じような顔をした自分の姿が見えたような気がして、早くまたキスをしてと縋るように強請ってしまった。
