
この世の中は矛盾だらけで出来てると思う。例えば、ダイエットをすると決意した友人がケーキやチョコを美味しそうに頬張りながら食べていたり、「君だけを愛してる」と言った男が平気で他の女の耳元で愛を囁いていたり。もしかしたら、ジリジリと刺すような紫外線を感じるほど今日の気温は暑いというのに、鉄朗と手を繋ぎたくなってしまうのも矛盾のひとつだろうか。隙間なく繋がっているわたしと鉄朗の手の中に生まれたちいさな世界は、きっと赤道直下の砂漠も驚くほど熱いに違いないのに。
「あつーい。今年暑くなるの早くない?」
「お前それ毎年言ってる」
久々に学校帰りのデートが楽しめると思ったのも束の間。この暑さにローファーと靴下を脱いでしまいたい衝動に駆られながらも、流石に街中でそんなことが出来るはずもない。とりあえずコンビニという聖地を目指し、アイスという魔法の回復薬を手に入れることを目指す。暑い季節の時期になるとクーラーの効いたコンビニはまさに天国、しあわせを感じることの出来るオアシススポットだ。コンビニの中で静かに漂う冷涼感に、肌が喜んでいる気さえする。しかし、当然の如く店を出るときは地獄へ落ちるかのような憂鬱さが待ち構えているのだ。無事にアイスを買い、外に出ると再びコンクリートのアスファルトからじりじりとした熱が伝わってくるようだった。
「鉄朗は暑くないの?」
「暑い」
暑いというくせに、この手は離さないでくれるのが愛しい。繋がっている鉄朗の骨ばった手を、何度もいじるように触ってしまったくらいわたしは浮かれていたようだ。そっか、とつい笑いながら言うと、するどい鉄朗はわたしのあまく溶けきった単純な思考に気づいたのか「手離しちゃおっかな〜」とニヤニヤ笑いながらからかうように言ってきた。「ダメ!」と必死で訴え、手を離すまいと強く握ってしまったせいで、わたしの体温は3度くらい上昇してしまった気がする。
コンビニを出ても目的地がなければ干からびてしまう。この憎いくらい澄みきった青空と太陽の下を彷徨っていたら思考回路がショートする危機を感じて、次の目的地は学生御用達のファミレスを提案した。「そんなとこで良いのかよ?」なんて言われたけど、部活で忙しい鉄朗と一緒に過ごせるならわたしはどこだって良い。特別感なんてものは皆無かもしれないけど、こういう当たり前みたいな普通の時間だってわたしは楽しいのだ。
出来るだけ日陰の道を探しながら歩く。コンクリートや鉄筋の建物ばかりがあるこの辺だけど、近道でもある公園には木がたくさんあって、緑のある景色を眺めるとほんの少し涼しさを感じる気がした。日陰はやっぱり涼しくて、まだ夏前なんだなと実感出来る僅かな瞬間である。
「まあでも真夏の体育館の方が暑いしな」
「確かにあのサウナ状態で運動するとか尊敬する」
「はクーラー効いた部屋でアイスばっか食ってるから暑さに弱いんだろ」
「そ、そんなことない!」
しかし、今も片手にアイスを持っているのできっと説得力皆無な否定に違いない。日陰が途切れて再び燦々と太陽の光が降る場所に出ると、むき出しになっている腕や脚が悲鳴を上げる。そういえば日焼け止めまだ塗ってなかった。コンビニでガリガリちゃんとコーンがついた普通のバニラのアイスとで5分くらい迷って結局決めらず、鉄朗に「どっちが良いと思う?」と聞くと「そっち」と言われて選ばれたバニラのアイスが、陽の光に照らされて溶けてきた。ただ、暑いのは変わらないけどアイスを食べているというその事実だけで、若干涼しいと錯覚出来てる気もする。反対に、アイスを食べていない鉄朗は「しかし今日は本当にあちーな」と青空に向かって呟いていた。
「鉄朗も食べる?」
「んー…じゃあひとくち貰うわ」
背の高い鉄朗のくちもとに届くよう斜め上に向けてアイスを差し出してあげたのに、それは鮮やかにスルーされてしまう。おや?と思っている間にわたしの冷たいくちびるに熱を持った鉄朗のくちびるがふんわりと重ねられた。ちいさく「つめて」と笑った鉄朗の言葉がわたしの心臓を溶かす。別にキスなんて今までだって何回もしてるし、人があまりいない場所でなら外でだってしたこともある。なのに、不意打ちというのはこんなにも全身の血液が沸騰するみたいに身体の内側から熱くなっていくものなのか。足が地面にくっついてしまったみたいに動けない。「おい、行くぞ。つーかアイス溶けんぞ」という鉄朗の声と共に手を引っ張られて、ようやく歩くことが出来た。
冷たいアイスを食べてるのに、まだくちびると心臓の熱がざわついている。うなじから首筋にかけてひとつぶの汗がすーっと流れ落ちるのが分かった。きっと制服の中はベタベタだ。なのに、わたしはどうしてもこの熱さを嫌いになれない。
「あつーい。今年暑くなるの早くない?」
「お前それ毎年言ってる」
久々に学校帰りのデートが楽しめると思ったのも束の間。この暑さにローファーと靴下を脱いでしまいたい衝動に駆られながらも、流石に街中でそんなことが出来るはずもない。とりあえずコンビニという聖地を目指し、アイスという魔法の回復薬を手に入れることを目指す。暑い季節の時期になるとクーラーの効いたコンビニはまさに天国、しあわせを感じることの出来るオアシススポットだ。コンビニの中で静かに漂う冷涼感に、肌が喜んでいる気さえする。しかし、当然の如く店を出るときは地獄へ落ちるかのような憂鬱さが待ち構えているのだ。無事にアイスを買い、外に出ると再びコンクリートのアスファルトからじりじりとした熱が伝わってくるようだった。
「鉄朗は暑くないの?」
「暑い」
暑いというくせに、この手は離さないでくれるのが愛しい。繋がっている鉄朗の骨ばった手を、何度もいじるように触ってしまったくらいわたしは浮かれていたようだ。そっか、とつい笑いながら言うと、するどい鉄朗はわたしのあまく溶けきった単純な思考に気づいたのか「手離しちゃおっかな〜」とニヤニヤ笑いながらからかうように言ってきた。「ダメ!」と必死で訴え、手を離すまいと強く握ってしまったせいで、わたしの体温は3度くらい上昇してしまった気がする。
コンビニを出ても目的地がなければ干からびてしまう。この憎いくらい澄みきった青空と太陽の下を彷徨っていたら思考回路がショートする危機を感じて、次の目的地は学生御用達のファミレスを提案した。「そんなとこで良いのかよ?」なんて言われたけど、部活で忙しい鉄朗と一緒に過ごせるならわたしはどこだって良い。特別感なんてものは皆無かもしれないけど、こういう当たり前みたいな普通の時間だってわたしは楽しいのだ。
出来るだけ日陰の道を探しながら歩く。コンクリートや鉄筋の建物ばかりがあるこの辺だけど、近道でもある公園には木がたくさんあって、緑のある景色を眺めるとほんの少し涼しさを感じる気がした。日陰はやっぱり涼しくて、まだ夏前なんだなと実感出来る僅かな瞬間である。
「まあでも真夏の体育館の方が暑いしな」
「確かにあのサウナ状態で運動するとか尊敬する」
「はクーラー効いた部屋でアイスばっか食ってるから暑さに弱いんだろ」
「そ、そんなことない!」
しかし、今も片手にアイスを持っているのできっと説得力皆無な否定に違いない。日陰が途切れて再び燦々と太陽の光が降る場所に出ると、むき出しになっている腕や脚が悲鳴を上げる。そういえば日焼け止めまだ塗ってなかった。コンビニでガリガリちゃんとコーンがついた普通のバニラのアイスとで5分くらい迷って結局決めらず、鉄朗に「どっちが良いと思う?」と聞くと「そっち」と言われて選ばれたバニラのアイスが、陽の光に照らされて溶けてきた。ただ、暑いのは変わらないけどアイスを食べているというその事実だけで、若干涼しいと錯覚出来てる気もする。反対に、アイスを食べていない鉄朗は「しかし今日は本当にあちーな」と青空に向かって呟いていた。
「鉄朗も食べる?」
「んー…じゃあひとくち貰うわ」
背の高い鉄朗のくちもとに届くよう斜め上に向けてアイスを差し出してあげたのに、それは鮮やかにスルーされてしまう。おや?と思っている間にわたしの冷たいくちびるに熱を持った鉄朗のくちびるがふんわりと重ねられた。ちいさく「つめて」と笑った鉄朗の言葉がわたしの心臓を溶かす。別にキスなんて今までだって何回もしてるし、人があまりいない場所でなら外でだってしたこともある。なのに、不意打ちというのはこんなにも全身の血液が沸騰するみたいに身体の内側から熱くなっていくものなのか。足が地面にくっついてしまったみたいに動けない。「おい、行くぞ。つーかアイス溶けんぞ」という鉄朗の声と共に手を引っ張られて、ようやく歩くことが出来た。
冷たいアイスを食べてるのに、まだくちびると心臓の熱がざわついている。うなじから首筋にかけてひとつぶの汗がすーっと流れ落ちるのが分かった。きっと制服の中はベタベタだ。なのに、わたしはどうしてもこの熱さを嫌いになれない。