※若干オトナ向けです。



 濡れた髪から滴をポタポタと落としながらフローリングの上を歩く女がひとり。シャンプーの香りを纏わせた艶髪から滴る水は、女の滑らかで白い首筋にゆっくりと伝う。肩にかけていたタオルで無気力に髪を拭くその様子から、女は本気で髪を乾かす気は無いのだろうということが窺えた。決して豊満な胸とは言えず、スタイルも特別言い訳では無い。然し、適度な胸の膨らみと陶器のような肌のきめ細やかさ、曲線が滑らかに表現される腰、ヒップから太ももにかけて流れるように美しい適度な肉づきの脚は、男からしたら申し分の無い女の形ではあるだろう。女はTシャツとショートパンツというラフなスタイルで、仕事中であろう男の元へと近づく。


「ちょっと、ちゃんと髪乾かして来いっていつも言ってるだろ」


 いつもはデスクの上に並べたいくつものパソコンで、椅子に座りながら仕事をしている男だが、情報屋でもある彼の仕事は何処ででも出来る。漆黒の革が施された高級そうなソファーに座り片手で携帯端末、ローテーブルの上にはノートパソコンを置き、強過ぎる光が放たれる画面に夢中のようだ。女はそんな男の隣に座る。ギシィとソファーが重みを感じた瞬間、男はキーボードが叩かれる無機質な音をBGM代わりにして画面から目を放さず、淡々と女に言葉を発した。


「だって、面倒くさい。じゃあ臨也が乾かして」
「今仕事中だって鈍感なでも見れば分かるだろ?パソコン壊れて仕事出来なくなったらどう責任取ってくれんの?」
「身体で払います」
「君の身体ごときでどうにかなるもんじゃないんだよ」


 女は頬を膨らませながらもキーボードを叩く男の腕にぴたりとくっつき寄り添った。男は仕方なく、キーボードを動かす指を止めたが、携帯端末の画面を滑らせる指は止まる気配が無い。女は携帯端末の画面を覗いて見るが、文字とアイコンらしきものが次々と止まることなく現れては目まぐるしく変わる画面展開についていけない。画面を見て目が疲れたのか、男の細くもしっかりとした腰に腕を回し、その胸板に猫のように顔をこすりつけ、微塵の隙間も生まれないようにぴたりと抱きついた。そうすれば少しはこちらを見てくれるかと思ったのだが、男の視線は相変わらず人工的な光を放つ画面に夢中である。女は再び動き、男の正面に回りこんだ。膝の上に乗り、首に腕を絡めて胸を押しつけるように抱きつくと、そこでようやく男に変化が表れた。息をゆっくりとひとつ吐いた男は、空いている片手で女の頭をゆっくりと撫で、そのまま流れるように背中を撫で回した。然し、視線は変わらず女には注がれない。けれど女は撫でられているのが心地良いのか、特に文句は言わなかった。男の手はゆっくりと下へ降りていき、Tシャツの中に冷たい手が這うと、女はその感覚を堪能することに夢中になった。


「あれ?、もしかして下着つけてないの?」
「パンツは履いてるよ」
「ブラジャーを外すという男のロマンを分かってないなあ」
「じゃあつけてくるから待ってて」


 女は男から離れようとしたが、男に腰を強く引き寄せられ、それは叶わなかった。その勢いで男のひどく整った顔と距離が縮まる。先ほどまで男の視線を独占していた携帯端末は既にソファーの上に投げ捨てられたようだ。男の片手は女の腰を抱き、もう片方の手は女の濡れた髪をやさしく梳かした。水滴が女のTシャツに落ち、張りついた生地が肌をうっすらと透けさせる。小さい山がふたつ形成されているそれを、男はやさしくひと撫でする。ひとつの山は男の片手に容易くおさまってしまうほどの大きさではあるが、大事なのは大きさではなく感度だ。生地がこすれて心地良さを感じたのか、女の腰はピクリと動いた。もちろん男は女のそんな一瞬さえも見逃さない。くびれを撫で回し、その手が上がっていくにつれてだんだんとゆっくり着ている服が捲くられていく。その行為に女の鼓動は速度を増し、山の先端は薄い生地の下からその存在を次第に主張し始めた。


「もういいよ、我慢出来ない」


 耳元で囁かれた声に、女は小さい耳殻を揺らし脳を貫かれるような感覚に陥った。男はスローモーションのようにゆっくりと女の髪を掬って耳にかける。零れた水滴が女の首筋から鎖骨へ伝うと、それを舌で下から上へとゆっくり舐めた。熱を持ってきた背中を撫でられ、女は官能的な表情を男の前に曝す。ほんのりと紅く染めた頬に、伏し目の所為か肌に落ちる睫毛の影。薄く開いた甘美な声を生み出す艷やかなくちびる。男は女の表情を意のままに操る。片手で頭を引き寄せ重ねたお互いのくちびるはやさしい。然し、それは最初だけであることを女は知っている。くちびるごと食べられるようなくちづけが角度を変えて何度も繰り返される。ねじこむように割り込んできた男の舌が女の舌を存分に堪能する。息が欲しい。女のそんな欲望とは正反対に男は女の酸素を奪う。ギリギリで生かされているとさえ錯覚しそうなほどのくちづけに、女は苦しみながらも歓びを覚える。やがて解放されると、男の指先が山の先端に直に触れた。いつの間にか侵入していた男の指は、携帯端末でもなくマウスでもなく、女の肌を優雅に滑る。親指と人差し指を器用に使い、その感触を楽しむように押し潰され弄ばられると、女の声が室内に甘く響いた。


「ぁっ…!」
「ちょっと、耳元であんまわめかないでよ」
「…っ、…」
「うんうん、は良い子だね」


 素直に従うのがこの女の可愛いところだと男は思う。背中や腰を撫でていた手はやがて彼女の下半身へと移動した。さらさらの白い太ももを抑揚をつけながら散々撫で回し、ヒップラインの曲線を堪能するように撫でては揉む。ショートパンツの隙間から指を滑り込ませ、湿ったショーツと早々に出会うと躊躇いもなく、更に内側に入り込み直に触れた。「あーあ、せっかくシャワー浴びたばっかりだったのに汚れちゃったね。っていうかさあ、どうせブラジャーつけないならパンツもはかなければ良かったのに。邪魔だし脱がす時間も惜しいんだけど」従順な女の肌は当たり前のように反応し、男の首に抱きつく腕がより強くなる。既にショートパンツにも染みを作るくらい濡れた女の下半身からはくちゅくちゅと厭らしい音が生まれる。


「っ…んっ…は、…ぁっ、」
「ああ、いいね。そういう、我慢してるけど我慢出来ないで漏れるくぐもった声とか吐息って好きだなあ」


 −人間の醜さと愛しさを表しているようで、滑稽だけどたまらなく求めたくなるよねえ?そんな男の台詞は女には聞こえていなかった。油断すると漏れてしまう声に必死で抗いながらも、与えられる快感になかなか身体が従ってくれない。男の耳を舐めまわすように響く女の艶めかしい声は、男を愉しませるのには充分過ぎる程だった。女は男の膝の上に乗ったために閉じることが出来ない自分の脚を恨めしく思いながらも、快楽をひたすら甘受する。


「今日はやっぱり仕事どころじゃなくなりそうだ」


 男の長く細い指の動きがより大胆になる。いつの間にかTシャツが上の方まで捲りあげられ、器用に胸の上で止まっている。露わになった白い山の先端に映える可愛らしい桃色が存在感を放つ。それを男の持つ生温かい舌で撫でられると、女の身体は電流が走ったように背中を反らし、反射的に男から離れようとした。然し、腰は男の腕と手によってしっかりホールドされているため逃げることは不可能だ。男の唾液で艶々と輝く女の小さなふたつの蕾は男の血液をより赤く滾らせる。


「さっき、自分で言ったよね?責任持って身体で払えよ」


 女の嬌艶な髪から滴り落ちる水は、男を容易く鮮やかに破壊した。