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「くれ」 「・・・何を?」 「良いから早くくれ!」 「だから何を!?」 万事屋銀ちゃん、と書かれた看板がある家のインターホンを押した途端、返答もせずにガラっと扉を開けた「万事屋銀ちゃん」は妙に神妙な顔をしていた。 普段は死んだ魚のような目をしてやる気がないような男なはずなのに・・・とインターホンを押した張本人、は思った。 扉を開けた途端、急に掌を差し出して主語も何もなく「くれ」の一言。いくらこの男の恋人であるでも理解に苦しんだ。 「・・・お邪魔しまーす」 「ってオイィィィィィィィ!無視すんな!」 手を伸ばしている銀時の手をさりげなくスルーし、銀時の横をサっとすり抜けて中へ入る。 毎日のように来ているにとっては家同然であり、第二の我が家であるこの家に遠慮も何もないのだ。 銀時を軽くスルーし中へ入るとソファーの上でくつろいでいる神楽と新八が目に入った。 いつものように軽く挨拶をし、いつものようにも所定の位置へと座る。 「!昨日来てくれなかったから寂しかったアル!」 「ごめんね、昨日はちょっとバタバタしてて」 抱き着いてきた神楽の頭を撫でてあげると「、甘いニオイがするネ」と神楽が言った。 「ちょっとぉぉぉぉぉ!銀さんに対する態度とずいぶん違くない?」と玄関から戻って来た銀時が言う。 「はいはい、うるさいですよ。さん、今お茶入れますから」と新八が言い、今日もいつもと変わらない日常のように見えた。 確かにいつもと変わらない日常ではあるが、今日は2月14日である。 「、その荷物何アルか?」 「あ、これね。じゃーん!チョコだよ!」 「うわぁ!美味しそうネ!私、よだれ出てきたヨ!」 「ふふ、はい神楽ちゃんには友チョコ!」 「やったネ!ありがとアル!」 「新八くんには、はい。義理チョコ」 「そんなハッキリ言わなくても・・・いえ、ありがとうございます」 「ちゃん、ちゃん。俺のは?」 「はいはい・・・あ、ちょっとごめん」 「んだよ、電話かよ!」 銀時へチョコを渡す直前、の携帯の着信が鳴った。 は一旦携帯に出ると、銀時は「ちっ」と軽く舌打ちをし、からチョコを貰えるのを今か今かと待っていた。 銀時はチョコを貰えるということに集中しすぎていたのか、の電話の会話は聞いていなかった。 そして、は電話を切ると袋から出しかけていた銀時へのチョコをしまい、急に立ち上がった。 「ごめん、ちょっと出てくるね」 「は!?ちょっと、俺へのチョコは!?」 「後でね」 「ちょっと待てェ!俺がこの日をどれだけ楽しみにしてたと思ってんの!?」 「そんなこと言われても・・・」 「あのね、俺は焦らしプレイは好きじゃないの!そんくらい知ってんだろ?」 「いや、知らないけど・・・」 「つーか、俺を置いてどこ行くんだよ?」 「真選組」 「はぁぁぁぁぁ!?」 の先程の電話の相手は真選組副長である土方だった。 真選組の近くにあるファミレスで働いてる彼女は彼らの知り合いであった。 そして、万事屋と真選組も少なからず関係を持っているため、会えば挨拶をするような仲だった。 銀時は「何で真選組なんか行くんだよ!?今日あんなとこ行ったらチョコくれって襲われて死ぬぞ!」と彼女の肩を揺さ振った。 彼女の頭は軽くシェイクされ、「じゃあ銀ちゃんも来れば良いじゃん・・・」と何とか言ったのだった。 聞くところによれば、どうやらは昨日財布を落としてしまったらしい。 昼間バレンタインの準備をするために人混みの中へ出掛け、必要な物は全て買えたものの、家に帰ったら財布が無かったとのことだ。 それを昨日の夜、偶然の勤めるファミレスに来た土方に話をした。 そして今日、真選組にの財布が届けられたとのことで連絡が入ったのだった。 「つーか何であいつがの番号知ってんだよ」 「まぁまぁ。そんなにプリプリしないで」 真選組の屯所の前に着くと、門番らしき人間が立っていた。 もちろん彼らもが働いているファミレスの常連なので、軽く挨拶をし顔パスで中へと入る。 銀時はその横を歩きながら、頭の後ろで手を組んで歩いていた。 普通に中に通され、真選組監査である山崎に客室へと案内される。 「さん、あのファミレスあんぱん置いた方が絶対良いですって」「うーん・・・どうかなぁ」と会話している2人の会話は 銀時にとってどうでもよく、届けられた財布を取りに来ただけなのにずいぶん手厚い歓迎だな、とただ銀時は何となく思った。 「ありがとう、山崎さん」 「いえ!副長ー、さん連れて来ました」 「あぁ」 山崎に案内され、部屋の中へ入るとタバコを吸っている真選組副長、土方がいた。 しかし、土方は隣にいた銀時の顔を見ると露骨に嫌な顔をし「何でてめーまでいんだよ」 「こんな野蛮な連中がいるとこにを一人で行かせられるわけねーだろ!」 「オイ・・・野蛮とは言ってくれんじゃねーか」と、いつものように子供のような口喧嘩が始まった。 は面白いのでしばらくは黙って傍観していたが、少しすると飽きてきたので「はいはい、そのへんで」と柔らかく止めた。 「おら、これだろ。お前の財布」 「あ!そうです、ありがとうございます」 「もう落としたりすんじゃねーぞ」 「はーい。あ、土方さん。お礼と言っては何ですが、これ」 そう言ってが差し出したのはチョコだった。 これに一番に反応したのは土方ではなく、もちろん銀時。銀時はその勢いで立ち上がり、土方を指しながらに問いた。 「ちょっとぉぉぉぉぉ!何でこんなヤツに渡してんの!?」 「いちいちうっせーヤツだな」 「俺だってまだ貰ってねーのに!」 「銀ちゃんには後であげるってば」 「そういう問題じゃないの!」 「土方さん、これバレンタインチョコです。良かったら真選組の皆さんでどうぞ」 「あれ、ちょっとちゃん。銀さんここにいるよ?」 「おう、悪ぃな」 「ねぇ、ちょっと!?俺の声聞こえてる?」 これ以上相手にしていたら面倒くさい、と思ったはまたもや銀時を鮮やかにスルーした。 「あ、土方さんにはこれですよね」と言い、が鞄から取り出したのはマヨネーズだった。 「気が利くじゃねーか」と土方が言うとと土方の雰囲気はまるで恋人のようだった。 その雰囲気にたまらなくなった銀時は机をひっくり返し叫んだ。 「銀さんは認めませーんんんんんん!」 「うわ、ちょっと銀ちゃん!」 「おい、帰ぇーるぞ」 「あ、引っ張んないでよ」 銀時はの腕を掴み無理矢理立たせると、そのまま引っ張って部屋をあとにした。 は去り際に「土方さん、ごめんね」と何とか言い、そのままずるずると銀時に引っ張られ屯所を出た。 「もー銀ちゃん、待ってってば!」 腕は解放されたものの、前を歩く銀時はずんずんと先を歩いていてなかなか立ち止まってくれない。 意外と子供っぽいところがあるので、頑固でもある銀時を何とか一度止まらせようと、は銀時の元へと駆け寄り、 手をぎゅっと握った。 「銀ちゃん歩くの早い!」 「あー・・・悪ぃ」 「今日どうしたの?いつもと違くない?」 「べっつにー。いつも通りですけど何か?」 「ほら、イライラしてる」 「べっつにー。してませんけど何か?」 「せっかくのバレンタインなんだから、ね?」 「そんな可愛く「ね?」とか言われたって銀さん何とも思わねーから」 いざという時は頼りになるが、普通の時は甘いものが大好きで少しヤキモチ妬きの子供みたいな普通の男だ。 こんな男の扱いを出来るのはしかいない、と新八や神楽、そして万事屋と関係のある人間は思っている。 は「もうー、仕方ないな」と顔を膨らませて、銀時の前に立ちはだかった。 そのまま銀時の目の前まで来て、銀時の服を掴み背伸びをする。 そして、ほんの一瞬、一瞬で離れてしまったがちゅ、と音を立てキスをした。 「ハッピーバレンタイン、銀ちゃん!」 そう言ってえへへ、と笑うをしばらく驚いた顔で見ていた銀時だったが、すぐに自身も笑い「そうかそうか、はそんなに俺が好きなのか〜」と の頭を撫で、どうやら満足したらしく「うん、だから銀ちゃん。早くお家帰ってバレンタインの続きしよ?」と言うと「しょうがねーなぁ」と満更でもなさそうに帰るのだった。 |
こんがりハートを掌に
(チョコレートプレイとか銀さん大歓迎なんだけど) (バカか!)
| テーマは「チョコくれ」でしたが・・・銀ちゃんが久々過ぎて全然分からなくなってしまいました。もっとカッコいい包容力ある 感じの銀ちゃんを書きたいんですけど私の技量じゃ無謀に近い。本当にすみません、ありきたりで面白くもないもので。ここまで読んで頂き感謝です。 |