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は並盛中風紀委員長である雲雀恭弥がいるであろう応接室の前に立っていた。 普段、この部屋の前を好んで通る人間は少ないため、周りには誰一人いない。 そんな静けさが余計に緊張感を増す。あの雲雀がいる部屋の前に立っているからではない。 あの雲雀が、いくら恋人からだとは言えバレンタインのチョコを受け取ってくれるかどうかが心配であったからだ。 チョコなんて持ってきて「没収だよ」なんて言われてしまったらどうしよう。 いや、ある意味没収されて雲雀の手に渡ることには変わりないけど・・・などと考えを巡らせていた。 並盛中でも普通にバレンタインデーは女の子が男の子にチョコを送っているので没収ということはないだろうが、 機嫌を損ねてしまう可能性はあるので不安で仕方ない。 「・・・入れば?」 「は、はい!お邪魔します!」 ノックをするかどうか迷っていたが、先に雲雀に声をかけられた。は一瞬驚きはしたものの、よくある事なのですぐに部屋へと入った。 部屋の中では椅子に座りながら机の上に肩肘をついて書類をまとめてあるであろう雲雀と、 その後ろに置かれた大量のチョコレートが見えた。(恭弥さんすごい貰ってる・・・それとも没収したのかな?) とりあえず、はそのまま応接室のソファーに座り、雲雀が一段落するのを待つ。 いつもは割とリラックスして座れるこのソファーも今日は固い石のようにさえ感じる。 しかし、最初は緊張していただったが、しばらくすると彼女に睡魔が襲ってきた。 前日のチョコ作り、そして雲雀に上手く渡せるかどうかで緊張していたは確実に寝不足だった。そしてそのままの体制でチョコを抱えながら寝てしまったのだ。 「・・・ねぇ」 「スー・・・スー」 「」 「・・・スー」 「起きて」 「んー・・・眠・・・!?恭弥さん!?」 「やっと起きたね」 「え!?な、何で、隣に!?」 「君がずいぶん静かだと思ったら寝てたから」 「あう・・・スミマセン」 ウトウトしているうちに眠ってしまったを、いつの間にか隣に座っていた雲雀に起こされた。起きたばかりで状況がつかみにくかったは最初は慌てたが、だんだんと事態を把握し、寝てしまったことに恥を感じて顔を赤くしてしまった。 ふと外を見ると、すでに空は暗かった。 「あ、ごめんなさい。もしかして私が起きるの待ってくれてました?」 「別に。ちょうど一段落したとこだったからね」 そう言いつつも、ソファーの前のテーブルには本が一冊置かれていた。 その本にはしおりが挟まれており、半分より後ろのところに挟まっていた。が寝る前に本は置かれていなかったので、おそらく雲雀がここで読んだものだろう、とは推測した。・・・となると、やはり結構な時間を待たせてしまったことになる。 バレンタインデーは女の子が好きな男の子にチョコをあげる日なのに自分は何をやっているんだ!と心の中で叱責する。 「ありがとうございます」 「・・・何が?」 「ふふ、何でもないです」 「相変わらず分からない子だね」 なんて、ほのぼのムードで過ごしている場合じゃない!と感じたはすぐに雲雀のために用意したチョコを渡そうと体ごと雲雀のほうを向いた。 距離が近いので、付き合っていても若干照れる。それでもこの人にはハッキリ言って渡さないといけないと思い、勇気を出した。 「恭弥さん、あの、これ・・・バレンタインチョコです!」 「・・・ああ、そういえば今日はそんな行事だったんだ」 「恭弥さんに受け取ってほしくて作りました!好きです!受け取って下さい!」 まるでまだ付き合っていない女の子が告白してるかのような台詞になってしまったが、間違いなくふたりは恋人同士である。 しかし、相手が雲雀ということもあるため「はい、これバレンタインチョコレート」なんて軽く渡せるほど、は器用ではなかった。 「開けて良い?」 「え!?今開けるんですか!?」 「ダメなの?」 「ダ、ダメじゃないです!開けて下さい!」 雲雀はが差し出したチョコをそっと受け取ると、すぐにラッピングを解き始めた。可愛らしい箱に可愛らしいトリュフが入っている。 他の人が見たら、雲雀とは何とも似合わない組み合わせだろうと思うだろう。 だが、雲雀はそんなことは気にするまでもなく、トリュフチョコをひとつ手で取り、口に入れた。はその姿を見て、すでに感動してしまったが問題は味である。一応は雲雀好みに作ってみたが、それを美味しいと思ってくれるかは分からない。 雲雀は例え彼女であるにも気に食わないことはハッキリ言うので、雲雀が何と言ってくるかが気になった。 しかし、雲雀は何も言わずに食べている。マズイのかな?とは一瞬思ったが、もうひとつ手に取りまた食べるので少しだけ安心した。 「・・・も食べる?」 「え、わ、私ですか!?」 「うん」 「じゃあ・・・いただきます」 自分があげたものをわざわざ食べさせるなんて、もしかしてやっぱりマズイの!? それを分からせようとして食べてほしいのかな?とは思い、今度は一気に不安に襲われた。雲雀が、食べるように進めてくるので、断ることはもちろん出来ない。 とりあえず言われた通り食べてみようと箱から一粒取りだし、口の中に入れた。 「(うーん、自分では普通に美味しいんだけどなぁ)」 「美味しい?」 「あ、はい・・・自分ではそう思ってます」 「そう」 「あ、あの恭弥さんは・・・どう思い」 「ねぇ」 「は、はい!」 は雲雀にもチョコレートの味を聞きたかった。しかし、それは雲雀の言葉によって遮られた。 次に何を言われるのかと緊張していただが、雲雀はそんなの頭をそっと撫でた。は目をぱちくりさせながら雲雀を見ると、雲雀はいつも見せる不敵な笑みをしていた。 「来年も作ってきてね」 |
隠し味に甘さをひとつ
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(何で私にも食べさせたんですか?) (に自信持って欲しかったから) (・・・絶対来年も作ってきます!!)
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