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「あれー、今日ちんは?」 「ああ、先帰ってるって」 既に夕方になり、空はもう暗い。雪が積もっており、外に出ると一気に寒さを感じる。 陽泉高校のバスケ部はいつも遅くまで練習があるので、帰る時にはほとんど空は暗くなっており、冬は校庭に一面の雪の姿も見える。 この銀世界の中で一体何組のカップルが今日誕生しただろうか。バレンタインデーの今日は学校全体の雰囲気が朝からずっと賑わっていた。 「ふ〜ん。いつもは室ちんのこと待ってるのに珍しいね」 「まぁ、遅くまで一人で待たせてるのも心配だったしな」 「うわぁ〜うざ〜い」 「はは、敦だって彼女作れば良いじゃないか」 「えー面倒くせーし」 陽泉高校バスケ部レギュラーである氷室と紫原は練習後、遅くなってしまったので軽く晩御飯を済ませ、2人で帰っていた。 この2人が一緒に帰ることは珍しい。何故なら氷室といつも一緒に帰る相手は彼女であるだからである。 は紫原と同じクラスで帰宅部の女の子。 いつもは氷室が部活を終えるまで図書館や教室で一人待ち、部活が終わる頃に校門に行って待っている、というのが大体のパターンなのだ。 氷室は、いくら学校内と言えを一人遅くまで待たせていると心配になる時がある。 何回か彼女に待ってなくても良いと伝えたことがあるが、「私が待ちたいんです!」と言われてしまうとその勢いに押されてしまい、結局はに敵わない。 待っていてもらえることは純粋に嬉しいので、心配ではあるが、特に不満もなく毎日のように一緒に帰っている。 「敦だって今日たくさんチョコ貰ったんだろ?」 「うん。超嬉しいー。毎日バレンタインなら良いのに」 「ったく、敦にとってはバレンタインも何もないな」 「あ、そういえばちんにも教室で貰ったよー」 「ああ、そういえばクラス一緒だったな」 「うん。ちんのが一番美味しかった」 「え?もう食べたのか?」 「うん、今日貰ったのはほとんど全部食べちった」 「(だから荷物が少ないのか・・・)」 バスケ部の中でも、モテる方の部類に入る氷室と紫原はお互い多くのチョコを貰っていた。 紫原には女子が友達感覚で「紫原くん、いつもお菓子食べてるからあげるね」という感じでくれる女子も多かった。 一方、普段からガチで人気のある氷室は後輩・同学・先輩問わず、多くの本命チョコレートを貰っていた。 「どうせこの後、会うんでしょ?」 「多分な」 「じゃあお礼言っといてー」 「ああ、伝えとくよ」 2人は他愛もない話をして、曲がり角で解散した。 バスケ部の2人ではあるが、そこまでバスケの話をしないのは紫原があまりバスケ自体に興味がないからである。 ただ、あまり女の子の話もしない紫原が、の話題を割と出すのは自分と同じクラスの子であり、クラスで一番よく話す女子であり、氷室の彼女だからだろう。 何となく話題に出ることは多かった。 氷室は一人暮らしをしている自宅へ帰ると、鍵を開けた。 家の中はもちろん暗いので、パチっと明かりをつける。 玄関の靴にはすぐに気付き、そのまま部屋の中へ入ると。彼女の頭が見えた。見えた瞬間、何となく安心出来たことを感じた。 「(やっぱりいた)」 部屋の中には、机の上に俯せになりながらスースーと寝ているがいた。 玄関にの靴があったのでがいることは何となく分かっていたが、眠っているのは少しだけ意外だった。 氷室は荷物を床に置くとの頭をしばらく撫でていた。はその間も気持ち良さそうに寝ている。 しかし、ずっと寝ていられても困る。 「、風邪引くよ」 「ん・・・」 優しく肩を揺さぶりながらに声を掛けると、起きたのか眠そうに目をこすり、まだ寝ぼけているようだった。 電気が眩しいのか、すぐには目を開けられず、しばらくするとようやく視界が明るくなり、すぐ側に氷室がいることに驚いた。 「う・・・わ!た、辰也さん!?」 「ただいま」 「あ・・・お帰りなさい」 は氷室が一人暮らしということもあり、頻繁にこの家に来ていた。 大体は部活終わりに一緒に帰り氷室の家に2人で行き、が夜ご飯を作るというのが日常であった。 氷室の体調管理はの作るご飯によって上手くコントロールされていることも多い。 「あ、ごめんなさい。私、寝ちゃって・・・」 「気にしないで良いよ。それに敦と軽く食べて来たから」 「そうですか・・・ってどうして笑ってるんですか?」 氷室はの顔を見ながらニコニコと笑っていた。 は涎でもついているのか?前髪が乱れてしまっているのか?と気にして、必死に直そうとしているが、そんな様子を見て氷室は更に笑うだけだった。 もちろん氷室が笑っているのはそんなことではない。 は恥ずかしくなってきたのか「もー何ですか?」と問うと、氷室はスッとの頬へ手を伸ばした。 「な、何でしょう?」 「ついてるよ」 「え・・・」 そしてそのまま唇の端にキスをして一度舐めた。このようなことを急にされることは初めてではないが、キスをされた場所と舐められるという行為に驚き反射的に離れようとしたが、氷室の手はいつの間にか頬から首の後ろに移動しており逃げることは許されなかった。 「チョコ、美味しく出来たみたいだね」 「えっ・・・!」 の唇の端には少しチョコがついていた。 が今日は氷室と一緒に帰らず先に帰っていたのは、バレンタインデーのチョコレートを作るためだった。 氷室はそのことを何となく分かっていたので、特に何も言わず今日は紫原と帰ってきたのだ。 そして、自分より一足先に早く帰った彼女は恐らく自分の家でチョコを作り味見でもしたのだろうと推測した。 その推測は見事に大当りで、はチョコレートを作り味見をしたあと、ついうたた寝をしてしまったところだった。 「・・・何でもお見通しですね」 「そんな事ないよ。どんなチョコかは分からないし」 「今食べますか?」 「ああ。が作ってくれたのならいつでも食べるよ」 「そ、そういう恥ずかしい事あっさり言わないで下さい!」 「はいつまで経っても慣れないな」 「も、もう!と、とにかく持ってきます」 氷室がストレートな発言をするのは今に始まったことではない。 だが、はいつまで経っても慣れることはなく、相変わらず照れた顔をしながら一瞬下を向く。 氷室はのこの顔見たさに、ストレートな発言や行動を繰り返す。 はキッチンに行くと、すぐに箱を持って戻ってきた。 家で作って家で渡すのにも関わらず丁寧にラッピングされてるのはの乙女心だろう。 氷室は「ありがとう」と受け取りラッピングをほどくと早速口に入れた。 「うん、やっぱり甘いな。美味しいよ、ありがとう」と言うとの腕を引き寄せ、また軽くキスをする。 「甘い・・・」とが呟くと氷室はの頭を撫で「から貰えるのが一番嬉しいよ」と言った。 「じゃあ私、洗い物しちゃいますね」 「ああ」 チョコレート作りの際の洗い物が少し残っていたため、甘い時間を名残惜しみながらもはキッチンへ行き袖をまくり洗い物をする体勢に入った。 ザーザーと水を流す音のせいか、は氷室がすぐ後ろまで来ていることに全く気づかなかった。 「きゃ!・・・びっくりした」 「悪い悪い」 「・・・そんなにくっつかれたら洗い物が出来ませんよ」 氷室はの後ろまで行くと、そっと彼女に抱き着いた。のお腹の前に手を置き、彼女の頭に顔に寄せると洗い物をしていた動きが止まった。 180cm以上ある男に抱き着かれているせいか、洗い物がやりにくくなる。 は訴えるために首を少し横へ向けるとすぐ近くに氷室の顔があった。 驚いたは一瞬にして首を戻したが耳が赤いのは隠せなかった。 「今日、敦にもチョコあげたんだって?」 「あ・・・はい。同じクラスですし、敦くんは甘い物大好きなので」 「敦が美味しかったって言ってたよ」 「そうですか。それは安心しました」 「でも、ちょっとだけ妬けたかな」 は聞き返そうと「え?」と顔を向けた瞬間、そのまま氷室に顔を固定され、何か言葉を発しようとしたがその前に口を塞がれる。 先ほどの軽い口づけとは違い、今度は長く甘いものになる。最中、蛇口の水が出っ放しになっていたのを氷室が片手でスっと止めた。 手が濡れていてどうすることも出来ないとは対照的に、氷室は余裕で水を止めたあとの腰に手をあてこちらへ向かせると抱きしめるような体勢でキスを続ける。 「・・・っ!た、辰也さん!」 「洗い物なんて明日で良いだろ?」 「え、明日って・・・?」 「どうせ今日泊まっていくんだから」 再び顔が赤くなった彼女を愛しそうに見つめながら、氷室はへ再び甘いキスをした。 |
白に映える甘い輝き
(ほら、早くこっちおいで)
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今回のテーマは「チョコ作って寝ちゃう」から何故か「どうせ今日泊まるんだから」に話が飛躍。
おそらく寮っぽいけど、とりあえず一人暮らしで。氷室が黒バス一番好きだったりするので、ようやく
書けたことにだけは満足です。・・・内容は別として。とにかく彼はイケメンで色気ハンパない!イイ男だと思います。 |