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「じゃーん!」 「おわっ!お前急に入ってくんなよ」 「あ・・・ごめん、丸井くん」 「あれ〜先輩どうしたんスか、その荷物?」 立海大付属テニス部マネージャーであるは何やら荷物を抱えて、レギュラーたちが着替えている部室へとやってきた。 部活終わり、練習着から制服へと着替えてる途中に彼女はノックもせず入って来る。このような事は割と日常茶飯事であり、 もし誰かが着替えていたら・・・ということを多少は気にするも、マネージャーという立場や経験から、 そこまで気にしたりもしないのであった。 しかし、彼等にレギュラー陳にとっては違う。昔、同じようにが部室へ入ってきたとき、たまたまレギュラーである丸井が着替えて いたことがあった。ちょうど上半身裸のパンツ一丁の状態でだ。やはり多少は目のやり場を気にするは「きゃ・・・ごめん」と 言い、少しだけ顔を赤くして俯いてしまった。それを見逃さなかったのが、の彼氏でありテニス部のレギュラーでもある 仁王雅治だった。仁王はその瞬間、まるで瞬間移動したかのように一瞬で丸井に詰め寄り「に汚いもん見せるんじゃなか」 と脅したのだ。この一件以来、女の子であるに着替えてるのを見られるのが嫌なのではなく、仁王にキレられるのは避けたい、 という思いが仁王以外のレギュラー全員にあり、部活後はいつもビクビクしている。 「今日はみんなご存知の通り、バレンタインデーです!」 「ああ〜毎年この時期大変なんだよな」 「とか言って丸井先輩喜んで貰ってるじゃないっスか」 「お前もだろい!生意気に山ほど貰いやがって!」 「ふむ、今年のデータも出揃いつつあるな」 そう、今日はバレンタインデーだった。バレンタインデーと言えば、男子も女子もウキウキしたりソワソワしたりする一大イベントで ある。立海テニス部のレギュラーは強豪校の選手ということもあり、基本はモテる。(多少の例外はあるが基本はモテる) なのでこのバレンタインデーでは、ほぼ全員が数えきれないほどのチョコを貰うのだ。毎年大量のチョコを貰い、大体は紙袋や ダンボールなどに入れて部室へやって来ることになる。今日も部室の片隅やそれぞれのロッカーにはパンクしそうなほどチョコがある。 「バレンタインなど下らん!そもそも学校に甘いものなど・・・」 「とか言いながら何気に結構貰ってるよね、弦一郎」 「う・・・ゴホン!」 「まぁまぁ。今日くらいは良いじゃないですか」 「これでしばらく食いつなげるぜ」 「(ジャッカル・・・あんま貰ってねーから俺の少し分けたほうが良いのかな)」 「そんなわけで、はい!私からもバレンタインデーの贈り物です!」 は荷物からチョコレートを取り出すと、それを順番に配っていく。 いくらモテモテの彼等とは言え、やはりチョコを貰えるのは嬉しい。 それに、バレンタインデーだけは仁王の彼女であるからチョコを貰っても仁王にはキレられない。 これはおそらく完全な義理チョコであり、仁王はに「みんなには感謝してるし、いつも頑張ってるからバレンタインくらいお礼がしたいの」 とでも上目遣いに言われ「仕方ないのう」と言わざるを得なかったんだろう、と真田以外は推測する。 実際、仁王は内心は面白くないと思っているのだろうがキレたりすることはない。それに、仁王自身も彼女という存在がいながらも かなりのチョコレートを貰っている。受け取りたくなくても机の上に置いてあったりするので、受け取らざるを得ない。 その手前、あまりにも強く言えないのだろう。 「って!チ□ルチョコかよ!」 「去年よりグレードが下がってるっス!」 「だってみんないっぱい貰うでしょ?荷物になっちゃうと思って」 「お気遣い頂きありがとうございます」 「いや、じゃあ何でそんな荷物なんだよ」 「あ、それはね・・・」 「新しいデータが取れた」 「ふふ、らしいね」 「何だ、この小ささは!けしからん!」 が今年用意したチョコレートはチ□ルチョコだった。それも一人につき一つ。 去年は普通の市販のチョコを渡したのだが、は彼等レギュラー陣のチョコを貰うあまりの量に驚いた。 チョコ持って帰るのも大変そうだなーと何となく思ったは、今年はエコ化を図ったのだ。 しかし、やはり女の子。好きな男の子には特別な物を渡したい。 は集団から少し離れてロッカーの前で帰る準備をしていた仁王の元まで駆け寄った。 「仁王くん、今日もお疲れ様!」 「・・・(ようやく喋れた)」 「はい、仁王くんへのチョコレート!」 「ってオイ!大きさも華やかさも全然違ぇじゃねーか!」 「仁王先輩だけズルイっス!」 「作ってるうちに大きくなっちゃって」 「しかも手作りかよ!」 が仁王へ渡したバレンタインチョコは他のメンバーのものとは全く違い、可愛く丁寧にラッピングされた物だった。 もちろん、他のメンバーに渡していたチョコの何十倍もある。これが本命とマジ義理の差か・・・と丸井は思った。 仁王は自分の最愛である恋人から他とは違う特別なチョコを貰えて嬉しいのか、普段は彼女であるにしか見せないような 笑顔を向け、チョコを受け取るとの頭を撫でた。 「から貰えるのが一番嬉しいぜよ」 「あのね、あまり甘くしすぎないようにしてみたの」 「開けてもよか?」 「うん!仁王くんの好きな食べ物と合わせてみたんだ!」 「・・・え!?」 「「「「「「「・・・・・・え!?」」」」」」」 仁王の好きな食べ物と・・・!?その場にいた全員は誰もが疑問に思い、誰もが一瞬恐怖を抱いた。 仁王の好きな食べ物と言えば焼肉だ。もちろんそれは部員の誰もが知っている。 しかし、いくらなんでも焼肉とチョコレートはどう頑張っても合わせられないだろう。 それに、ひょっとしたら彼女であるしか知らない仁王の好物があるのかもしれない。 仁王以外のレギュラーはそう思った。しかし、その想像は一瞬にして崩れる。いや、ある意味当たりと言えるだろうか。 「今年はチョコレートがけ焼肉にしてみました!」 彼女がそう言ったと同時に、仁王はラッピングを解き、タッパーらしき入れ物の蓋を開けた。 そもそもバレンタインチョコがタッパーに入っているというのも可笑しな話だ。 タッパーの蓋を閉じている状態ではただの茶色い物にしか見えなかったが、開けてみるとそこには誰もが見たことのない 物体が広がっていた。彼女の言葉通り、焼肉にチョコレートがかかっている。そのまんまだ。 「うっわー・・・マズ・・・うごっ!んんっ!?」 一番年下である切原が思わず「マズそう」と声に出そうとしたが、近くにいた丸井に腹に肘鉄をされ、柳に口を塞がれた。 当の本人の仁王はと言えば・・・固まったままだった。仁王は普段、滅多なことで驚かない。 おそらく常に先手を読み、余裕をもつタイプだからだろう。しかし、その仁王が珍しくも驚いている。 他のレギュラーも驚きと焦りを浮かべているが、部長である幸村だけは必死に笑いを堪えていた。 「あっ・・・やっぱやり過ぎたかな?」 「・・・」 「でも、仁王くんに好きな物をあげたかったから・・・」 眉を八の字にしながら、少し照れたような困ったような顔をしているを見て、仁王はようやく固まりかけていた感情と体を動かした。 他の全員は「一応やり過ぎたって思ってんのかよ!?」や「困りたいのは微妙な立ち位置の俺らだ!」と思ったりしていたが、 と仁王の2人の間だけには甘い空気が流れていた。 ちゅ 「!?」 「「「「「「!?」」」」」」 仁王は周りの目も何も気にせず、いきなりに「ちゅ」と音を立てるようなキスをした。 はもちろん他のこの場にいる全員が驚いている。先程のの焼肉チョコレートがけを見たときより驚いた。 それもそうだろう。友人が誰かとキスをしているところなんて普通は滅多に見ない 他のレギュラーに背を向けているの顔は分からないが、耳が真っ赤なのには誰もが気づいた。 「に、仁王くん!?きゅ、急に、しかもみんながいるのに・・・」 「があまりにも可愛すぎて我慢出来なくなったんじゃ」 「さ、早く帰るぜよ」 「う、うん」 「続きはあとでちゃんとしちゃるからのう」 「!!」 は恥ずかしくなって居づらくなったのか「じゃ、じゃあ外で待ってるね」と言い、そそくさと部室を出て行った。 しーんとなった部室で一番最初に口を開いたのはと同じくらい顔を赤くしている真田だった。 「け、けしからん!仁王、貴様こんなとこで何を・・・!」 「良いじゃろ、別に」 「つーか、こっちが照れんだろい!」 「いや、それより問題はそっちよりこっちじゃないのかな?」 「しかし、折角さんが仁王くんのために作ったのですから・・・」 「柳生先輩、完全に人事っスね・・・」 「食べたら是非味の感想を聞かせてくれ。データに使えそうだ」 「何のだよ!つーか流石の仁王も食わねーだろ」 「・・・俺・・・多分明日は腹痛で休むぜよ」 |
デンジャラスチョコ!
(が喜ぶんなら何でもするに決まっとるじゃろ)
| 今回のテーマというかネタは「焼肉にチョコレートかけ」 たまににくらい困ってる仁王くんも見たい。 |