珍しくよく眠れたとはぼんやり思った。うっすら時間を確認すると、そんな長時間眠っていたわけではないようで、けれども熟睡出来たという感覚が芽生える。そして何回か瞬きを繰り返し視界が鮮やかになってくるのを待つ。けれどもそこに待っていたのは、限りなく近い氷室の顔だった。


「・・・!ひ、ひむ、氷室先輩・・・!」
「おはよう。よく眠れたみたいだね」


 は辺りを見回し、そういえばいつもの自分の部屋の風景ではないような気がする、と感じた。何しろ横に氷室が同じように寝ているのだから、それもそうだろう。はようやく、夕べは氷室と一緒に寝たということを思い出し、少しだけ気分を落ち着ける。しかし、氷室が同じ空間にいることに対しては解決したが、こんなに近くにいることには未だ動揺を隠せない。


「氷室先輩はいつ起きたんですか?」
「んー、ちょっと前」
「そうですか・・・(じゃあ起き上がれば良いのに)」
「もう一回寝ようかな、と思ったんだけどの寝顔が可愛すぎて」
「!!」


 どうして笑顔でそんな事を言ってくるのか。どうして頬を撫でながらそんな事を言ってくるのか。の顔は自然と燃え上がるように熱くなる。おまけに夕べのうちから氷室に腕まくらをしてもらっていたらしく、長時間も頭を乗っけていてごめんなさい、という罪悪感にも襲われる。早く軽くしてあげなきゃ、と思い頭を浮かせて離れようと思ったが、その腕枕をされている腕で頭を撫でるようにされているため、それは無謀に終わった。その撫でられている感覚がリズム的で、また目がとろんとしてくる。目覚めが悪いのか良いのか分からない朝には戸惑いを感じて仕方が無い。


「じゃあ・・・そろそろ起きましょうか」
「もう少し良いじゃないか」


 それでもやっぱり起きて朝の準備をしなければ、と思ったは身体を起こそうとする。しかし、氷室のもう片方の腕が腰に回ってきて抱き寄せられてしまったので、余計に動けなくなってしまった。氷室の胸に顔を埋めると 何だか落ち着く香りがする。


「ダメですよ。そろそろ起きなきゃ」
「でも、久々の休みだしとこうやってゆっくりしたいんだ」


 最近氷室は甘えてくるのが上手くなった、とは密かに思った。氷室はの年上でもあり、いつも余裕があり優しくエスコートしてくれるような人間だ。周りから見てもリードしてくれる素敵な恋人であるし、自身もそう思っている。 けれども、恋人という関係になって氷室がたまにではあるが甘えを見せるようになってきた。甘えというよりただの欲望かもしれないが、それでも切なそうな笑顔で言われると、こちらもそれを振り切れないとはいつも感じている。


「ダメ?」
「・・・もう」


 ダメ?とそんな目で言われて「ダメ!」などと言える人がいたら見てみたい。そう思えるほどは氷室のこの顔に弱かった。何より、自分にだけ甘えてくれることが嬉しかった。


「・・・少しだけですよ?」
「うん」


 許可の言葉を出せば、くしゃっと笑う氷室の顔が目に入る。その顔にこちらの顔が赤くなってしまうほどの笑顔だ。そんな顔を見られたくなくて、はまたしても氷室の胸に顔を埋める。けれども頭や額、耳にちゅ、と音を立ててキスを何回もされるので、気になって仕方が無い。


「ん・・・ちょ、ゆっくり過ごすじゃないんですか?」
「うん。でもがこんなに近くいたらキスせざるを得ないじゃないか」
「な・・・!」
「大丈夫。朝だからゆっくりめに、ね?」


 何が大丈夫ですか!何がゆっくりですか!というの反論は、氷室の甘い口づけに飲み込まれ掻き消されたのだ。





小鳥におはよう
(やっぱりは朝でも夜でもいつでも可愛いね)



2012.8.12〜2013.8.11