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ようやくやってきた休日。何事も頑張ったあとに来る休日というのは最高のご褒美だ。そんな休日をとにかく時間を気にせずに過ごす。何ともまぁ贅沢な時間の使い方だと感じながら、やわらかいクッションに顔を埋めて、優雅なひとときを過ごす。・・・これで彼がいなかったら優雅なのだが。 「、起きて!デート行くっスよ!」 私の身体をゆさゆさと動かすこの大きな人間。これが本物の犬だったらまだ可愛いものの、私より遥かに大きい体格を持つ男だから余計にウザったくて仕方ない。そりゃあ涼太くんは昨日は家でゆっくりしていたみたいだし元気でしょうよ。でもですね、わたくしは昨日も一昨日もその前も、ゆっくりしている時間なんてなかったから休みたいんですの。ひとり脳内で説明をしたところで、もちろん目なんて開けない。一瞬でもこの目を開いて彼の顔を見てしまったら、それこそすぐに捕えられてしまう。 「も〜、起きて!デートじゃなくても良いから!つか、そんなに寝てるとダラケ病になるっスよ」 私は休日のお父さんで、彼は息子!?目を閉じていても無邪気な彼の様子が伝わって来る。大きい男のくせにこういう可愛らしいところがあるのも、きっと世間の女の子を騒がす彼の魅力なのかもしれない。だが、しかし!ここで目を開けてしまったら私の負け。絶対に目なんて開けないし起きてもやらない。ごめんね、涼太くん。今日は暇そうな青峰くんとでも遊んで来て下さい。 「・・・起きてるくせに起きないなんてズルイ子っスね」 彼の声がワントーン下がったのが分かった。彼の言う通り、本当は起きてるからだ。こういうときの彼はいつもの人懐こい彼とはちょっと雰囲気が変わる。マズイ、と思いつつもここで目を開けるわけにはいかない。そしたらそれこそ彼に「ほら、やっぱり起きてたんスね」と言われ、まるで弱みを握られたかのように彼のアクティブなデートにこのあと付き合わされるに違いないのだから。 「それなら、」 目を閉じているせいで全く何も見えないけれど、その分気配には敏感になる。自分の目の前に何かが近づいて来た感覚を覚えた瞬間、唇に何かが触れた。このナニカは間違いなく彼の唇だということは分かっているけれど、確証はなかった。あんなに頑なに拒んでいた瞼がいとも簡単に開き、予想通りの彼の顔が0センチにある。もう一回ちゅ、と今の彼の顔に似合わない可愛い音を立てられキスをされた。彼は満足そうな顔である。 「起きた、っスね」 さっきまで纏っていた意地悪な雰囲気は一層され、今度は幸せそうな彼の笑顔が目に入った。その顔と彼が元々持っている端正な顔立ちのせいで、まるで童話に出てくる王子様のように見えてしまった、だなんて。恥ずかしいからそれは黙っておこう。 「おいで、俺のお姫様」 でもこんなにくさい台詞を吐く彼に比べたらマシか、と仕方がないので大人しく起き上がって彼の胸に顔を埋めた。 |
王子様には
敵わない
(愛しいお姫様がいる王子様は幸せ者っスよね)
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<2013.08.11〜2013.10.06> |