「最近眠れないアル」


それは練習の休憩中、劉がふと漏らした悩みだった。事態は思っているより深刻そうで、それを聞いていた氷室は 劉を心配し、紫原はあまり関心がないのか、話を聞きながらもボーっとしていた。


「ホームシックか?」
「分からないアル・・・」
「へー、大変そうだね」
「お前らは平気アルか?」
「俺は別に・・・」
「俺もー。抱きまくらあるし、むしろ安眠」


この紫原の発言に、劉も氷室も些か驚いた。こんな大きい図体をした人間が抱きまくらを使うのか、と。しかし、 それが紫原なら何故か納得出来る。けれども、紫原の身長に合う抱きまくらなんて存在するのだろうか。


「敦の身体に合う抱きまくらなんてあるのか?」
「うん。俺も探すの超苦労したけど、一緒に寝てみてビックリした」
「そんなに良いアルか?」
「安心するし、抱き心地は良いし、あったかいし、気持ち良いし」
「(あったかい?気持ち良い・・・?)」
「お前の身長に合うなら俺にも合うはずアル」
「え、絶対に貸さないよ?」
「敦、それって」


そんな三人の会話の後ろにマネージャーであるが通った。紫原が愛を注ぐ、彼の大事な恋人である。が 通りかかるとすぐに、紫原は彼女の腕を引っ張り、重苦しいほどに抱き着く。紫原のような巨体に抱き着かれる ことに彼女は慣れているが、人前でこのように抱き着かれることには未だに慣れていない。頬を赤く染める彼女を、 紫原はもちろんだが、氷室も劉も何となく可愛いという感情を抱く。もちろん紫原の前でそんなことは絶対に言えな いが。


「敦くん、離れて!」
「やだー」
「なるほど。抱きまくら、か」
「うん、俺の抱きまくら」
「抱きまくらってのことアルか!」
「そ。だから貸さないよ。自分で探せば〜?」
「うざいアル・・・」


途中から入ったには話が全く分からない。けれども、何となく恥ずかしくなるような会話をされていることは 少し分かる。だから早くここから去ろうとするが、紫原の絡み付いた腕がそれを許さない。


「くっついてたら何か」
「ダメ!絶対ダメだからね!」
「すごいな、敦が次言うことまで分かるのか・・・」
「夫婦みたいアルな」
「えー、じゃあ良いよ」
「(敦にしては諦めが早いな。彼女のことになると諦め悪いのに)」


紫原の顔がいつものボーっとしたのんびりした顔ではなく、少し歪んだのがここにいる全員分かった。歪んだ、 と言っても崩れた歪みではない。笑顔の歪みだ。


「夜にとっておくから今日も一緒に寝よーね」





秘密兵器
(もう死ぬまで手離せないかも)



2012.8.12〜2013.8.11