「仁王くん、テニス教えて!」


帰宅部の私は体育以外の運動を自主的にすることはない。特に運動が好き、というわけでもないのでこのままでも 良いと思っていた。しかし、そんな怠惰な生活を過ごしてきたせいか、以前より3kg太ってしまったのだ。 たかが3kg、されど3kg。女の子には重要な問題である。特に仁王くんが細いから私も少しでも細くいたい。


「珍しいこと言うのう」
「私もたまには適度に運動しないとね」


そこで運動でもして痩せようと思った。何の運動をしようか、と考えていたところ、彼氏である仁王くんが目に入 った。そうだ、私の彼氏はテニスの全国大会にも余裕で出るくらいの、あの仁王くんだ。ここはテニスを仁王くん に教えてもらう以外ない!


「こう?」
「ちょっと違うぜよ」


そんなわけで現在仁王くんに教えてもらってはいるのだけど・・・彼は意外とスパルタだった。 ボールを打ったりコートを走る以前に、まずフォームを細かくチェックされる。最初は口だけだったのに、 いつの間にか私の後ろに回り込んで手取り足取り教えようとしている。仁王くんは意外と面倒見が良いみたいだ。


「腕はもうちょい下ぜよ」
「・・・っ」


ただ・・・さっきまでは全然意識していなかったのだけど、距離が近い!しかも、普段は下ろしている髪の毛を、運動の ためアップにしているので、仁王くんが喋るとちょうど私の耳やうなじに仁王くんの息がかかる。その感覚につい、ビクッとなる のを隠せず身を固まらせてしまった。そして数秒・・・仁王くんは何故か何も言わないし動かない。 後ろにいる彼がどんな様子でいるのか分からないため、とりあえず声をかけてみた。


「に、仁王く・・・きゃ!」


勢い良く抱きしめられたかと思うと頬に軽い口づけをされる。


「せっかく我慢して教えとったんに・・・」
「ご、ごめんなさい」


どうして私が謝っているのだろう。でも、仁王くんがぎゅっと抱きしめてくるから 恥ずかしくてそれ以外言葉が見つからなかった。


「運動ならテニスより良いのがあるぜよ」





甘さに漂流
(ああ、あの天国と地獄の運動か)



2012/4/29〜2012/8/12