「仁王くんってさー、汗かくの?」


 エアコンが効いている室内で、はふと疑問を漏らした。は仁王の恋人であり、普通の人間に比べたら、仁王にとても近い距離にいる。一緒にいる時間も長い。けれども、彼が汗を流している姿を見たことがなかった。季節が春だろうと夏だろうと秋だろうと冬だろうと、見たことがない。テニスという汗をかくハードなスポーツをやっているのに、その時でさえ見たことがないように感じる。


「何じゃ、急に」
「何となく。ぼんやり思って」
「俺だって汗くらいかくぜよ」


 本人はそう言うが、には仁王が汗をかくイメージが想像出来ない。何かに一生懸命になるイメージがないからだろうか。練習もそんなに真面目にやる部類ではないし(もしかしたら、私に気づかれないように影で一生懸命努力してるのかもしれないけど)、試合もそんなに力を入れてやっていない時が結構ある。(単純に立海のレギュラーで強いからかもしれないけど)部活、テニス以外で彼が汗を流すのは到底想像が追いつかない。可能性があるテニスで汗をあまり流さないなら、一体何処でいつ流すというのか。


「あ!冷や汗とか!?」
「そんなんかかんぜよ」
「・・・そうだよね」


 確かに仁王が何かに怯えたり不安がったりするような姿は想像出来ない。はせっかく閃いた答えだと思っ たのに、また最初からやり直しになったような気分がした。一体何だと言うのだろうか。もう仁王雅治という生物は汗を流さない生き物として認定して良いんじゃないだろうか。しかし、本人が汗をかくと言っているのにそんな事を決めつけるわけにはいかない。


「割と頻繁ぜよ」
「え!?本当!?全然分からないんだけど」


 しれっとした顔で、何食わぬ顔顔で発言された仁王の言葉だが、はこの一言で一気に身体が熱くなった。その熱さは顔の赤さが表している。こんな適温の室内で、どうして熱くなってしまうのだろうか。どうして手の平にじんわりと汗が滲んできているのだろうか。


「な、何でそんなこと言うの!?」
「さては・・・変な想像したんじゃろ?」
「し・・・してない!」


 完全に見透かされてると分かっていながらも、反射的にごまかしてしまう。「ほう。俺はといる時はいつも 汗をかくほどドキドキしちょるって言う意味じゃったんだけど」なんてからしたら嬉しくて仕方がない言葉を思いがけず貰い、余計身体の熱が上がる。


「仕方なか。ここは応えなきゃ男が廃るナリ」
「す、廃らない!大丈夫!」
「そんな赤い顔して言われても説得力ないのう」
「・・・」
「まぁ、でもにそんな余裕はないと思うぜよ」


 口元を歪ませて笑う仁王のこの顔は、反対によく見る。この顔を見たらもう最後。そして自分の結末も容易に想像出来る。


「そんなこと考えられないくらい愛しちゃるからの」





導かれた
愛情表現

(誘ってきたのはの方じゃろ?)



2012.8.12〜2013.8.11