「ずるいナリ」
「んだよ、うるせーな」


 定期的に行われる席替えというイベントに心を踊らせる人間は数多い。仁王もそのひとりであり、柄にもなく少しばかり緊張していた。少しでもの近くにいたい。クラスが同じだからこそ出来るとの過ごし方がある。そんな期待を胸に忍ばせていたというのに結果は見事に惨敗である。周りからすれば惨敗というほどでもないと思うのだが、仁王はお気に召さなかったらしい。


「どうして俺がの前でブン太がの後ろなんじゃ」
「仕方ねーだろい。それにお前だっての前なんだから良いじゃねーか」
「前と後ろじゃ大違いナリ」
「まぁまぁ二人とも」


 縦3人で会話をするのは些か不便である。特に真ん中のは、体を横にして二人の間にいるため窮屈そうで仕方ない。窓際の一番後ろが丸井、その前が、その前が仁王と、美味しいとこどりの座席で一体何が不満だと言うのだろうか。


「ブン太はイマイチ分かってないぜよ」
「んだよ、前の席だって後ろ向けばがいるんだから良いじゃねーか」
「後ろ向かないと見れないなんて落ち着かないぜよ」
「こわ!お前どんだけを見てたいんだよ」
「ずっとだって言うとるじゃろ」
「まぁまぁ二人とも」


 仁王は珍しく饒舌のようで、席替えに対しての熱い思いを語る。前の席だとプリントを渡すときくらいしかの顔を見れない。見たいからと言って、ずっと後ろを向いていたら教師に注意をされる。良いことなんてひとつもない。後ろの席なら、をずっと見てられる。たまに後ろを向いてくれたらすごく嬉しい。前後でこんなにも違うのが分からないのか。仁王はを挟んで丸井に訴える。


「お前・・・その情熱を少しで良いからテニスに向けろ」
「嫌じゃ。俺はテニスよりと一緒にいたい」
「私はテニスをしてる仁王くんカッコイイと思うけどなー」
「・・・テニスも頑張るぜよ」
「(・・・仁王の扱いも手慣れたもんだな)」





毎日に幸せを
つめこんで

(むしろ隣の席での寝顔とかこっそり見れたほうがおいしかったかもしれんの)



<2013.08.11〜2013.10.06>