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片側に寄せた髪に、露わになった首筋。たったこれだけで彼を誘惑するには充分だったらしい。もちろん、わざとそんなことをしたわけではない。ある程度の髪の長さを持っている女性なら、誰だって一度はしたことがあるんじゃないだろうか。髪が全て逆へ行ってしまったせいで少しだけ涼しい感覚があった首筋側は、今ではもうすっかり熱い。そこを指でなぞってしまえば火傷してしまうんじゃないかというほどの熱を持っている気がするのに、彼は指どころか唇を何度も滑らせる。 「くすぐったい?」 「うん」 「可愛い」 くすぐったくて逃げようとしても彼の腕によってどこへも行くことの出来ない私の身体は泣いているのか、喜んでいるのか。髪を寄せている反対側の首筋が可哀相、だなんて一瞬でも思ってしまった自分を認めるのが少し嫌だった。 「の首筋ってすごく色気があるんだよね」 聞いていないのに「首筋だけじゃないけど」なんて置き土産を耳に残していくものだから、耳を塞ごうと思ったのに彼の唇がそれを阻む。いやらしいリップ音を私の耳元で奏でる彼の方が色気があるんじゃないだろうか。撫でるように唇を滑らせるだけでは物足りなくなったらしい彼は、その美しい形の唇から私のすべてを溶かしてしまいそうな舌先を、首筋と耳に一度滑らせた。いきなり変化した感触に、思わず漏れた声を彼が見逃すわけもない。今度はその声を奪うような優しい口づけが、私の目をそっと伏せさせる。目を閉じると聴覚に神経が集中してしまうせいで、今度は耳までその口づけの音に侵されてしまう。唇が一度離れると、一気に静かで寒くなったような気がして彼に抱き着いてしまった。 「どうしたの?」 「私がくっついちゃダメなわけ?」 「そんなことないよ」 「じゃあ、良いじゃん」 「でも、どういうことか分かってるよね?」 そんな艶めかしい笑みに見とれている間に、またしても瞬く間に奪われた唇は先程までの穏やかな動きは一切なく、食べられるんじゃないかというくらいの情熱的なキスへと変貌した。舌先で分かち合うこの温度は、今ならきっと何でも溶かしてしまう。時々ゆっくり、そして時々激しく動くそのスピード差に翻弄されている私の舌は、まるで彼専用の舞台のよう。 「んっ」 「そんなに熱っぽい目で見られたら抑えられないよ」 抑える気なんて最初からないことくらいお見通しなんだから。そんな強気なことを言う暇もなく、散々踊った彼の舌は今度は私の耳へと舞台を移したらしい。唇や舌とは違う、耳に与えられるこの温度と感触と音は、脳に直接響くようで先程よりも声が漏れてしまうのをコントロール出来ない。 「あ、耳、やっ」 「嫌じゃないだろ?」 そんなこと分かってるから大丈夫だよ、と語りかけるように笑う彼が、目を閉じていてもその声音ですぐに理解出来る。耳にだけ集中していれば良いと思っていたのに、今度は彼の指が頬に触れ、顎の輪郭を指で辿り、そのまま首に滑り鎖骨を撫でる。鎖骨を指で撫でられる行為にドキドキする暇もなく、いつの間にか彼の大きな手が私の胸の膨らみを捕らえていた。優しく撫でるような円を数回描いたあとは、彼の親指がある一点に集中させられる。服の上からでも敏感になってしまうその場所に、彼の指がまるで吸い寄せられているかのよう。全身熱くて眉を寄せる私と違って、なんだか彼はとても楽しそう。滑るように服の下に潜り混んできた彼の手は、とても冷たい。 「ひゃっ」 「どうかした?」 「冷たい」 「ごめんごめん、でもすぐに温かくなるから」 でも、この火照ってしまった肌にはちょうど良い。ブラの上から胸の膨らみを数回撫でられると、とてもスムーズな動きで上半身の服を脱がされた。同時に彼も上半身の服を脱ぐと、鍛え抜かれたその美しいとまで言えるほどの身体とお目見えすることになる。女のくせに可笑しいだろうか、彼のその身体にとてつもない色気を感じてしまうなんて。この筋肉がついた腕に力強く抱かれるのだろうと思うと、急に「男」というものを実感して、余計にドキドキしてしまう。 「これ、やらしいよね」 肩からずり落ちたブラの紐を触りながらそんなことを言う彼は、少し無邪気なようにも感じられた。私を再びベッドへ寝かせた彼は、片方の胸には啄むように唇を落とし、もう片方ではその大きな手を使って優しく円を描く。いつの間にか外されたブラが床に落とされる音を聞くと、空気に触れた胸を隠したくなった。既に何度も見られているとは分かっているけど、つい隠したくなってしまう。でも、そうして胸の前で守るように置く私の腕は、いつも彼によってベッドに縫いつけられる。 「どうして隠すの?」 「だって、恥ずかしいんだもん」 「もう何度も見てるのに?」 「それでも恥ずかし、あっ」 人がまだ喋っているというのに、一番敏感になっている胸の頂上にいきなりぬるっとした温度が一度与えられる。いよいよ彼の舞台はここまでやってきたようだ。けど、すぐに頂上ではなくその付近に移動してしまった。一番触れて欲しいところになかなか触れてくれない、周囲に伝わる生温かい温度に焦れていると、見計らったかのようなタイミングで彼の舌が頂上を侵す。それだけで自分の脚を思わず擦り寄せてしまう。 彼の舌が飴でも舐めるかのように動くと同時に、もう片方の舞台の上では彼の手や指が、華麗にステージを繰り広げている。もう私の腕は解放されているというのに、彼を止めることは出来ない。 「すごく気持ち良さそうな顔してる」 「い、言わないで…っ」 「声、抑えないで。の感じてる声、聞かせて」 「やっ、ぁっ…っ」 ちゅっ、と可愛らしい口づけを唇に落とされたのも束の間。いつの間にかショーツの中に侵入してきた彼の指は、早くも私の濡れを感じた。「すごいことになってる」と言われても、自分が一番分かってるからこそ何も言えないのだ。その隙にスカートどころかショーツまで脱がされて完全に裸となった私には、もう自分を隠す術が見つからない。お腹にも唇が落とされ、束の間の程よいくすぐったさを楽しめるのは一瞬だけ。すぐに彼の指が、私の身体の中で小さいけれど一番敏感なふくらみ部分をゆっくり撫で始める。 「はここも好きだよね」 私の吐息は彼の唇ではもう拾い切れないんじゃないだろうか。頃合いを見計らって、細くて長い指がナカに入ってきた感触を身体全体で感じる。一本、そしてもう一本入ってきた指は、これからの冒険に胸を弾ませるかのようにゆっくりと、でもその世界をどこまでも動く。それだけでもドキドキは止まらないというのに、ある場所に彼の指が当たると、短く漏れた声が彼を余計に楽しくさせた。 「あ、ダメっ…っつ、そ、こはっ…」 「大丈夫だよ、ここが良いって分かってるから」 「ち、ちがっ…やっ、あっ」 「違くないだろ?」 加速するその指の動きに私の全身が翻弄されていくのが分かる。それ以上は何も考えられなくなって、身体が浮いた感覚になったと同時に彼の指が引き向かれた。脱力感に襲われ、息を整えていると「可愛い」という言葉と共に顔中に降って来る唇は、とても純真。 けれど彼が次に唇を降らせた場所は純真でも何でもない。私の脚を開かせた彼の腕は何とも力強い。反射的に脚を閉じようと思っても、彼の力によってそれは無駄に終わる。そのまま彼の唇が、彼の舌が秘部を撫でるように、舐めるように、味わうように動いているのが見えなくても与えられる感覚でよく分かる。そんなキレイな顔が、私のこんな汚い部分にあるということが恥ずかしくて嫌でたまらないはずなのに、あまりに心地好すぎてただ短い喘ぎ声を漏らすことしか出来ない。ナカには指、敏感なふくらみには舌、という逃げることが出来ない感覚に、またしても品のない声を上げながら頭の中が真っ白になる。純白じゃない、いやらしい白だ。 「はぁっ…は、あ」 息を整えている間に、彼のベルトを外すカチャカチャという音が頭の片隅で聞こえている。もう隠すことなんて忘れてしまった私の胸が呼吸と同時に動いていると、彼の大き膨れ上がったモノが私の割れ目付近を彷徨く。ふくらみを亀頭で撫でられると、そのいやらしさに眩暈がする。おまけに、いつ入ってくるのだろうという呼び名が分からないこの感情に耐えられず、ついつい恥ずかしいとは分かっていながらも彼に声をかけてしまう。 「あの、」 「何?」 「えっと、」 しかし、とてもじゃないけど心の中に存在している思いを伝えることは出来ない。何となく彼の腕をさすって頑張ってみるものの、肝心の言葉は出てこない。彼は私が何を言いたいか分かっているはず。そして、私が言いたいことを彼は分かっているということを私は分かっている。更に、私がハッキリ言わないと彼は応えてくれないということも分かっている。結局何も言わない、なんて選択肢もう私の中には存在しない。 「お願い、…て、」 「え?聞こえないけど」 彼は普段、すごく優しい。なのに、こういう甘い雰囲気になるといつも少しだけ意地悪になる。「が可愛い過ぎるから、つい意地悪したくなるんだよね」なんて、嬉しいのかよく分からない言葉をもらったことがあるが、解決には全くならない。私は身体を起こし、彼の首に自分の腕を巻きつけた。勢いよく起き上がって彼に飛びついたけど、彼は倒れることなく抱き留めてくれる。 「挿れてっ」 短く、小さく、且つ真っ直ぐな言葉はギリギリで認めてもらえたらしい。恥ずかしいから顔を隠すために抱き着いた彼の素肌は、何て心地好いのだろう。そんな彼に頭をふわふわと撫でられると、それだけでうっとりしてしまう。唇を一回食べられ再びゆっくり寝かせられると、鼓動が最高潮にまで達する。 ゆっくり、ゆっくりと少しずつやってくる彼の膨れ上がったモノが私のナカに半分ほど入った頃だろうか。残りすべてを埋めるように勢いよく突入してくるその感覚、衝撃に涙さえ出そうになる。彼が絞り出すように吐き出す吐息に、この上ない色気と甘さを感じることが出来て嬉しくて。彼と繋がって、温度を分け合ってるということも嬉しくて、何度体験しても毎回胸が高鳴るこの感覚に酔いしれる。 「、好きだよ」 「ん…っ、」 またもや顔中に落とされる愛が楽しくて、嬉しくて。でも、徐々に徐々に動く彼の腰に合わせるように眉を寄せたくなる。もう何も考えられない、彼のこと以外。縋りつきたくなって彼の腕に伸ばした自分の手さえ美しく見える。私のそんな想いに応えてくれるかのようにキスをしてくれる彼はやっぱり温かい。 「気持ち、良い?」 「んっ、う…っん、きもちっ」 「素直だね、可愛い…っ」 「た、辰也く、っんはっ?」 「オレもっ、と一緒で、気持ち良いよ…っ」 その言葉だけで私の下半身を疼かせる。ぐちゅぐちゅとなる卑猥な音、パンパンと腰を打ちつける音たちでさえ、このベッドの上でひとつの物語を繰り広げるBGMのよう。でも、肝心なベッドはその動きに悲鳴をあげているようだ。他に聞こえるのは、ふたりの吐息と短い声だけ。腰を揺らしながら私の胸への愛撫も、唇への愛も欠かさない彼は、やっぱり意地悪だけど優しいのだろう。唇を塞がれても漏れてしまう音さえ、目を閉じればBGMのひとつ。加速するのは動きだけじゃない。 「んっ、っ、ぁっ、ゃっ、っつ、ぁぁっ」 「、っ…」 力が抜けると同時に彼の動きもゆるやかになり、彼が私に重なるように体重を少しだけかけてきた。お互い息を整えている呼吸がシンクロしているようで、それさえも嬉しい。ようやく動くようになった手で彼の頭をわしゃわしゃと撫でてあげるとお返しと言わんばかりに、甘ったるいのに妖艶な笑みとキスをプレゼントしてくれた。 |
HEAVEN
*リハビリ用に書いたものなので、予告なく加筆修正或いは削除の可能性がありますことご了承願います