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完璧な人間なんて、この世にはいない。それに「完璧」なんて明瞭のように見えて曖昧な感覚は人それぞれ。じゃあ、私にとって完璧な人とは何なのだろう。明るくて、元気で、優しくて、そんなポジティブな言葉ばかり並べても意味が無いような気がする。やっぱりそれは人それぞれの感覚なのだから。 「の彼氏って完璧だよね」 以前、友人に言われた言葉である。私はその言葉にどういう反応を示せば良いか分からなかった。それも一回だけじゃない、彼を見た人・彼を知っている人は皆そう言う。確かに否定はしない。けれど、すぐに頷いて肯定をするというわけでもない。確かに彼は私にとって出来すぎた恋人。10人いたら10人全員が私には勿体ない彼氏だと言う気さえする。 まずは外見。隣で本を読む彼に寄り掛かりながら、気づかれないようにその姿を見つめる。私の瞳に映る彼は確かに眩しい。身長・体重はモデル並のスタイル。世の中の男性にしては大きいけれど、規格外ではないその身長はきっと世の女性を魅了するのだろう。バスケで鍛えられた身体は、私ひとりを抱えるくらい何てことないと言ってのける。そういえば前にお姫様抱っこをしてくれた時があったっけ。あの逞しい腕や胸板には不覚にも胸を高鳴らせてしまったのを今でもハッキリと覚えている。 「どうかした?」 「んーん」 そして誰もが認めるであろう整った顔立ち。最初の頃はこの顔に見つめられるという当たり前のことにも不慣れだったように思う。おまけに右目の下にある泣きぼくろに視線を誘導され、結局彼の瞳に飲み込まれてしまうというオプションつきだ。ただでさえキレイな顔立ちをしているのに、女の私が嫉んでしまいそうなほどずるい部分をたくさん持ってる。けど、彼にそれを伝えると「の方がキレイだよ」と甘い言葉に変換させられてしまうので、常日頃思っていても滅多に口にしないようにしているのだ。 「退屈させちゃってるかな」 「そんなことないよ。こうしてまったり二人で過ごすの好きだから」 「そっか」 そして女性の扱い方。今、私の頭を撫でてくれるのだってそう。彼は女性が喜ぶ行動だったり女性が言われたい言葉を、とても自然に振る舞うことが出来る。与えられるこちら側が恥ずかしくなるくらい。きっと彼がLA育ちということも関係ないとは言い切れないのだろう。彼は全く自覚をしていないが、多くの日本人男性には無いその魅力が、彼の武器のひとつでもある。 性格だって文句なし。女性にはもちろん、男性にも紳士的なその性格や対応は異性だけでなく同性からも信頼を集めている。優しい上に気配りが出来る人は意外と少ない。そういえば以前、私が行ってみたいと言っていたフレンチレストランを、記念日の日に内緒で予約してくれておまけに花束をくれたんだった。そういう面でもぬかりはなし。例えば、私が家の鍵を無くした時でも何かヘマをした時でも、彼は慌てず傍にいてくれる。そのおかげで私も彼と一 緒にいることにより安心感を覚えるのだ。その包容力が私を離してくれる日は来ないだろう。 「本を読むのはやめにするよ」 「あ、ごめんね。そういうつもりじゃなかったんだけど」 「いや、純粋にオレの問題だから」 「オレの問題って?」 「に見つめられたら、ドキドキして本どころじゃなくなってしまうってこと」 そう、こういうところ。そして当たり前のようにくちびるを重ねるその所作さえも美しいと言葉を零したくなる。完璧な彼氏、誰もがそう言うだろう。でも、それは彼のほんの一部分に過ぎない。 彼は冷静沈着、いつだって落ち着いているように見えるけれど中にはとても熱いものを秘めている。たまに熱くなり過ぎるところだってあるくらい。そのギャップが良いのかもしれないけれど。それにあんなに大人な雰囲気を纏っているくせに、たまに甘えてくる時だってある。甘えると言っても抱き着いてきたり、身体を擦り寄せて来たりくらいなのだけど。 「みんなが辰也くんは完璧な彼氏って言うから観察してたの」 「完璧?それはだいぶ過大評価されてるな」 何より、彼にだって弱い部分があることを私は知っている。もしかしたらそれは、彼の傍にいることを許されている私だけが知っている秘密でもあるのかもしれない。 「そう思うの?」 「特にの前だと完璧ではいられなくなってしまうしね」 すべての自分をさらけ出してしまうから、と言う彼に何だか愛しさが込み上げて彼の頭を撫でてあげたくなった。彼は元々面倒見の良い性格だからだろうか。きっと、あらゆる感情を必死で抑えて、溜め込んで、我慢している時があるはずだ。たまにそれが思い切って表に出てしまう時もあるみたいだけど、妬みや僻み醜いとも思える感情を抱くことは誰にだってある。むしろ、そんなところも人間くさくて良いんじゃないかなと思う。私にとっては彼のそんなところは、彼の大切な一部であり彼の魅力のひとつ。 「愛しい女性の前では誰だってカッコ悪くなるし不器用にだってなるよ」 いつも頑張ってるんだから、私の前でくらいありのままでいてくれることが嬉しいのに。男のプライドというやつも多少はあるのだろうか。私は彼がカッコ悪くなろうが不器用になろうが、何だって良い。それが例え世間では完璧と思われないようなことだったとしても、私は完璧ではないそんな彼が好きなのだから。あれ、結局私にとって完璧ではない彼が完璧? 「でもだからこそ、そんなオレを受け止めてくれるが心から愛しいんだ」 ただ、そんなラブソングの歌詞にありそうな言葉を簡単に吐く人間のどこが不器用なんだと言ってやりたくもなる。それにこういう台詞を言われることは今回だけじゃない。 「そ、そういう台詞…さらりと言えるの本当すごいと思う」 「そういう台詞って?」 「い、愛しいとか」 「嫌?」 「嫌じゃないけど、」 「オレがこういうことを言えるのはだけだから、愛の言葉くらい言わせて欲しいんだけどな」 そんなこと言われてしまったら、もう何も言えないじゃない。彼が私にだけ言うというその愛の言葉たちは私の胸をいつだって高鳴らせる。一体こういうやり取りを今まで何度してきただろう。毎回同じ、毎回「恥ずかしい」と訴えても返ってくるのは「恥ずかしがってるのも可愛い」だとか「思ったことを言ってるだけだよ」だとか結局何の解決にもならない答え。もうウンザリと思いながらも何故か何度も繰り返してしまう。 「だ、だからそういうことを言うところ…も、」 「言うところ、も?」 きっと彼も私のすべてを理解してくれている。そして、私が恥ずかしがりながらも、彼からの愛の言葉を本当は嬉しいと思っていることだって理解しているはず。でも、だからこそズルイ。そうやって結局私は彼の器用な部分にも不器用な部分にも魅了されてしまう。 「好き、って分かってるくせに」 他人からしたら下らないループを閉幕させるために重ねられたくちびるは、逆に愛を開幕ループさせてしまった。 |
果てしない再演
(不器用だからにはつい意地悪したくなるんだ。…なんて、ね)