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女という生き物はほとんどがひどく可愛い存在であるが、醜い存在になってしまう可哀相な女も極稀に存在する。女同士が集 まれば当然派閥だとか同じ思考を持ったもので固まり、それが悪い方向へ進んでしまうことも少なくない。男にはバ レていないとでも思っているのだろうか。大抵そういう醜さは内だけでなく、外にも表れている。例えば俺に話し掛 ける時にやたらと高い声を出す女。けれども俺以外の男や同性である女と話す時は、どこからそんな声が出るのだろ うかというほど気怠く低い声を出す。その成り代わり様は、今後役者という仕事をやることになったら参考にしたい くらいだ。 「、帰ろ」 「あ・・・うん」 俺は女がそういった醜い姿を見せてくるのに残念ながらも頻繁に出会ってしまう。何故なら俺の恋人である存在が嫌でも標的にされ るからだ。先程まで俺に高い声で愛想よく話していた女が、俺の彼女と話す時は特に一段と低い声で聞くに耐えない 罵声を浴びせ、罵る。俺たちと同じクラスの女はもちろん、違うクラスの女でさも彼女を責める。以前、その場面をこの目で見てしまったこともあるが、彼女が何も言わずに耐えていたので、俺も 割り込むようなことはしなかった。そこで助けてやれよ、と言われるかもしれないし自分でもすぐに彼女の元へ 行き、その震えている身体を抱きしめようと思ったが、彼女がそんなことを望んでいるようには思えなかった。 「今日の好きなお菓子買っといたんス。一緒に食べよ」 「うん、ありがと」 彼女は一見大人しく見えるが、芯の強い女だった。その可愛らしい外見からは予想がつかないほど、頑固である。おま けに帝光中でバスケ部のマネージャーをしていたときもよく働いており、たまに俺がふざけていたりするとその小 さな身体から大きな声を出してよく叱ってくれていた。高校に入ってもその芯の強さは変わらない。 だからこそ、絶対に折れないのだろう。 「涼太くんの部屋っていつ来てもキレイだよね」 「そりゃあがいつ来てくれても平気なくらいにはしとくっスよ」 もう何回も来ている俺の部屋に入って、ようやく彼女が安堵の表情を浮かべたような気がする。これは勘でしかない が、おそらく今日俺が来る前に、あの勘違いをした女たちに何かされたか何か言われたのだろう。彼女と俺は帝光を 卒業して、海常に入学をする前に付き合ったため、こういった経験を彼女が味わうようになってしまったのも 初めてのことに違いない。俺としても、今まで 遊びで付き合った女は何人もいるが、こうやって一対一で向き合うように付き合う女はが初めてである。それ故 、このようなドラマや漫画の世界でしか見られない嫉妬から来る女の嫌がらせが存在することも実は初めて知った。 「あー、今日も疲れたっス」 「ちょっと!今洗い物してるんだから抱き着いて来ないで」 「練習頑張ったんだから良いじゃないっスか」 「自分を甘やかさないの!」 彼女のお叱りならば、一切不快ではないから不思議だ。ただ、いつもなら大人しく従うところではあるが、今日ばかりは そんな気分になれなかった。後ろから彼女を抱きしめている腕は決して離さない。そのまま手を伸ばして水が出ている水道を止めると、彼女は不思議 に思ったのかこちらを振り向いた。彼女のことはいつも見ているはずなのに、何故か急にたまらなく愛しくなってしまったことは 理屈ではないので説明出来ない。「どうかしたの?」と言う彼女を潰れないように、でも力強く抱きしめると、彼女 の声は俺の胸の中へか細く消えていった。 「は?」 「え?」 「も自分を甘やかさないようにしてるの?」 くぐもった声さえも聞こえなくなってしまった。恐らくこの問いに答えが返せないのだろう。正直、俺だって彼女か ら答えが返ってきたとしても、それが正解か不正解かなんて分からない。自分自身を甘やかさないことは、もちろん 悪い事ではない。でも、それによって潰れてしまったら意味がない。せめてこうして抱きしめてあげること で、一緒にいることで、少しでも彼女の中に存在する無駄な心配や不安が取り除けたら、と思ってしまうのは甘いこと だろうか。 「涼太くん・・・どうしたの?」 「ねぇ、」 「・・・何?」 「俺と一緒にいるの辛い?」 「えっ・・・!?」 「知ってるんスよ。俺と付き合ってることでがどんな目に合ってるかくらい」 「あ・・・ごめん」 「何でが謝るんスか?」 「心配とか迷惑掛けないようにしてたつもりだったんだけど」 むしろ自分が謝らないといけないというのに、何といじらしい事を言うのだろうか。こういう自分より他人のことを優先して考える事が出来る部分もまた愛らしいのであ る。けれども時にそれは虚しくもある。例えば、友人に何かあったりすると彼女は俺を放置して早々と友人の元へ 向かってしまう。それに今のように、自分の気持ちはあとにして俺の心配をする。どれも彼女の愛しい部分ではあ るが、たまに無性に心臓が握り潰されるかのようにキリキリする。 「そんなの・・・俺のことなんてどうだって良いんスよ」 「えっ・・・」 「俺に心配掛けたって、迷惑掛けたって良いんスから」 「でも、それじゃあ涼太くんが」 「もっと自分のこと優先して良いんスよ」 俺の下から聞こえてくる彼女の声に、微かに涙が混じっているように感じた。今思えばの涙を見るのは初めて かもしれない。実際に今、涙を見ているわけではないから何とも言えないが。彼女がこうして俺に寄り掛かるよう にくっついてくるのも初めてであり、が悩んでいるというのに、そのようにされることに嬉しいと感じてしまうなんて、俺は全く悪い男である。 「最近、色々言われたりとかして涼太くんの彼女でいて良いのかちょっと不安だっただけだから・・・」 「そんなこと思ってたんスか?」 「だって・・・」 少しだけ拗ねてるような顔と口調も初めて見るものであり、また新たな一面を知ることが出来て嬉しいというのと 可愛らしいという感情が芽生える。こんなにも俺の胸と身体を熱くさせるのは、彼女以外どこを探しても存在しないだろう。機嫌 を取るように頭を撫でてやると、少し恥ずかしいのか顔を赤らめている姿が、更に俺を誘惑する。思わずその唇に 自分の唇を重ね合わせてしまえば、驚きながらもそれを享受するに余計愛しさが増した。 「大丈夫、俺に愛されてるんだから自信持って」 に自信を持ってもらうために囁いた言葉だと言うのに、その言葉で余計顔を赤らめ躊躇いながらも小さく 頷くに、自分も愛されてるなと思わされてしまい、その可愛らしい唇を奪い去ったあとはどうしてやろう かと楽しくなった自分はやはり悪い男である。 |
瞑られた花に
潤いを捧ぐ
(俺には間違いなくしかいないのだから)