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私は休みの日でも割と早起きである。朝の7時30分には起きていて8時には朝食も食べている。そんな早く起きて一体何を するのかと言うと・・・特にこれと言ってすることはない。ただ、目が覚めてしまうから早く起きてしまうだけだ。しかし、 今日は朝起きて10分後くらいにメールが来た。こんな早くから誰だろうと思うと、同じクラスで前の席の緑間くんだ。 『お前に頼みがある』 『頼み!?緑間くんが私に!?』 緑間くんは結構プライドが高い。というか高そうに見える。実際勉強も出来るしバスケもすごいと噂なので、プライドが高か ろうが何だろうが何とも思いはしない。けれど、そんなプライドが高そうな彼が私に頼み事があると言うのには流石に驚い てしまう。 『引き受けてくれるな』 『いや、まだ内容聞いてないし引き受けるなんて言ってない』 『お前でも出来る簡単なことなのだよ』 こういうたまにカッチーンと来る上から目線なところがあるけど、それも緑間くんの特徴のひとつである。けれど、よく教室 に遊びに来る緑間くんのお友達、高尾くんのように扱い方さえ上手く出来れば緑間くんはとても面白い人物・・・だと思う。 私も最初は背の高い緑間くんの後ろの席で黒板が見えず、よくギャアギャアと文句を言ったものだ。しかし、彼は全く気遣い などしてくれず相変わらず背筋を伸ばして授業を受けている。だが、少し経つと緑間くんは私にノートを見せてくれるよう になった。そう、彼は意外と優しいのだ。 『・・・で、頼みって何?』 『今日の試合に来い』 『今日!?試合って・・・バスケの?』 『そうだ』 『いや、いきなり言われても』 『お前に予定なんてものないだろう』 『失礼な!・・・まぁ、ないけど』 『遅刻は許さん。待っているのだよ』 最後の「待っている」の部分だけならカッコイイのに。なんて思いながらも仕方がないので会場へ向かう準備をする。 緑間くんから会場が書かれたメールが来ると、意外にも近いので助かった。彼のことだから、どこか遠い地方でも来いと 言いかねない。 電車を乗り継ぎ、30分ほどで試合会場と言われる体育館へ着いた。予想以上に大きい体育館に、予想以上の人。これは ・・・緑間くんを探すのは困難なのではないだろうか。メールをしたとしても、もし試合前だったりしたら見てくれはしない だろう。 「あれ、ちゃん?」 「あ、高尾くん!」 これはラッキー。こんな大人数の中、緑間くんと同じバスケ部の高尾くんに会えるなんて。高尾くんとはクラスが違うけど、 緑間くんのところに毎日来るからいつの間にか顔見知りになって、会えば挨拶くらいはするようになっていた。 「こんなとこで何してんの?」 「緑間くんが急に来いって言うから」 「真ちゃんが・・・?あれ、そういえば今日真ちゃんって・・・」 「ん?」 「あ〜、ハイハイ!なるほどね!」 「何?」 「じゃあとりあえず行こっか」 高尾くんは一人で納得すると私の腕を引っ張って進んで行ってします。おいおい、私は女の子よ。もう少し優しく扱ってち ょーだい。なんて言う隙もなく、体育館の中へ連れられてしまう。ジャージを来た選手らしき人が多いけど、部外者の私が こんなとこへ入ってしまって良いのだろうか。 「大丈夫だって。流石にベンチまでは行けないけど、フロアには入れっから」 「そういえば試合ってもう始まってるの?」 「俺らはこれから。お、ちょうど良いとこに」 高尾くんが大きな声で「真ちゃーん!」と呼ぶと緑間くんがこちらを振り向いた。高尾くんがそのまま私を引っ張って緑間 くんのところへ行くと私は思いっきり見下ろされながら(身長的にいつも見下ろされているけど)、「遅い」と怒られた。 「ひどい!頑張って来たのに!」 「とりあえず中に入って出来るだけ近くで俺を見ていろ」 「え、何で?」 「うわっ、真ちゃそのセリフ超カッコいい」 緑間くんがコートがあるフロアへ入ると高尾くんに背中を押されながら私も無理矢理フロアへ入らせられる。・・・会場の中 はまさにすごい迫力。コートで実際に試合をしていて応援もすごく聞こえる。もしかして、かなり大きい大会なのだろうか? このフロアにはほとんどジャージやユニフォームを来た選手しかいない。そしてマネージャーと思われる制服やジャージを 来た女の子たちくらいだろうか。なるほど、だから制服で来いと言っていたのか。 「って、緑間くん!何で私を来させたの?」 「・・・それはお前が俺の今日のラッキーアイテムだからなのだよ」 「アイテム!?パーソンじゃなくて!?」 「いや、ちゃん。ツッコミそこじゃない」 「何それ、またおは朝?」 「ああ。おは朝は外れたことがないからな」 「え、おは朝で蟹座のラッキーアイテムはとでも出たってこと?」 「・・・とにかくお前はここから一歩も動くな」 結局曖昧にされたまま、「もう試合の時間だ」とかで私は置いていかれてしまう。高尾くんも「一人にさせちゃってごめんね 」とか優しく言いながらも行ってしまう。でも何故か顔がにやけている。仕方がないので、ここで彼らの試合を見ることに した。そういえば緑間くんがバスケすごいって噂は聞いているけど、実際見たことはない。だから少し驚いた。普段は何事 にも執着しなさそうなのに、楽しそうに一生懸命バスケをしている姿に驚いたのだ。そして試合もあっという間に圧勝。 というか・・・これ、失礼かもしれないけどラッキーアイテムなんて要らないくらい容易い相手だったんじゃないだろうか。 「ちゃん、ごめーん。俺達の活躍見ててくれた?」 「うん、二人ともすごくてビックリした」 試合が終わると高尾くんがやってきて、その後ろからゆっくり緑間くんが歩いて来た。・・・試合終わったばかりなのに全然 疲れてなさそう。そして私が今日のラッキーアイテムだと言う緑間くんは私の正面までやってくると手を伸ばした。 「俺はラッキーアイテムはいつも持ち歩いている」 「知ってるよ」 「たいてい手に乗る物は手に乗せている」 「知ってるって」 「しかし、流石の俺でもお前を乗せることは出来ない」 「え、何?意味わかんない」 「だが、そこそこの働きはしてくれたようだな。ご苦労なのだよ」 全く会話のキャッチボールが出来ていない。けれど、そんなことは気にしていないという様子で、緑間くんは伸ばした手を私 の頭に乗せると優しく撫でてくれた。な、何だこれは・・・!まるで父親が小さい娘を褒めているような図だが、感覚は少し 違う。何故か頬に熱を持ってくる。緑間くんのくせに!そして高尾くんが「真ちゃん、大胆〜」とか言ってるのが少しイラっ とする。「高尾、うるさいのだよ」と言ってくれた緑間くんに感謝。 「今日はあと1試合ある。最後までいろ」 「えええ、まだ!?というか本当に私がラッキーアイテム!?」 緑間くんは私の言葉を無視して言ってしまう。緑間くんの背中が遠くなると、近くにいた高尾くんが頭の後ろで手を 組みながら話しかけてくる。彼はどうして今日ずっとニヤニヤしているのだろうか。 「いやー、今日真ちゃんが珍しくラッキーアイテム朝から持ってなかったの何でかよく分かったわ」 「え?」 「真ちゃん・・・いや、蟹座の今日のラッキーアイテム知りたい?」 「だから私なんでしょ?意味わかんないけど」 よくよく考えたらおかしい話だ。テレビの占いに私の名前なんて出るはずがない。それに蟹座の人間は緑間くんだけでは ない。この会場にもたくさんいるだろうし、もしかしたら対戦相手の中にだっていたかもしれない。そんな私の考え事を スパっと切るように高尾くんがこっそり教えてくれる。 「・・・好きな子、だよ」 今日の蟹座のラッキーアイテムは好きな人。好きな人が近くにいればどんな事でも乗り越えられます。 |
女神は赤い果実
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