アイドル戦国時代。そう世間で騒がれるように、昨今この薄いテレビの中は可愛い人やキレイな人で溢れている。溢れすぎてそのうち画面から出て来るんじゃないだろうかという程。アップに映し出されても眩しいくらいの肌のきめ細やかさ。今までテレビだからどうせ誤魔化しているんだろうとか卑屈なことを思っていたけど、科学技術が進化したこの時代のテレビの鮮明さは真実を映し出す。要は、元から美しいのだろう。


「この女優さん、最近化粧品のCMで見掛けるけど本当可愛いしキレイ」
「そういうもんかの」
「仁王くんはそう思わないの?」
「男が思う可愛いと女が思う可愛いは違うじゃろ?」
「えー、こんなに可愛かったら誰が見ても可愛いと思うんだけどなぁ」


 確かに男が言う「可愛い」や「キレイ」が私たち女には理解出来なかったり、逆に私たち女が言う「可愛い」「キレイ」を男の人に理解してもらえないことはよくある気がする。けど、その可愛さだったりキレイさが飛び抜けていたら関係ないんじゃないだろうか。一体こういう人たちはどこにいるのだろう。でも今思えば、テレビに出ている女優さんやアイドルだって雑誌に出ているモデルさんだって、みんな昔は一般人だったはずだ。もしかしたら近所を歩いていたかもしれない。芸能人だから素敵なわけじゃない。持っている資質や潜在していた魅力があるから華やかに見えるのだろうか。あとはきっと、何かしらの努力。


「まぁ…そうじゃのう。客観的に見たら確かに可愛いと思うんじゃが好みではない、みたいなんもあるぜよ」
「なるほど」
「…は可愛くなりたいんか?」
「そりゃあ女の子だったら可愛くなりたいとか、キレイになりたいって思うよ」


 女の子の大多数がきっと心の奥底にもっと素敵になりたいという想いを秘めている。だから洗顔やスキンケアだって欠かせないしメイクだって日々研究する。雑誌やテレビを見て、このメイク方法良いなぁとかどうやってるんだろうとか。ヘアアレンジだって怠らない。どうやって巻いたらモデルさんみたくふわふわな髪の毛になるんだろうとか、どうやって編み込んだらこうなるんだろうとか。可愛い洋服や着たい洋服があった時に似合わないと嫌だから体型を調整しようとしてみたり。ちょっと食べ過ぎちゃったって思う時は走るんだから!そうやって、少しでも理想に近づくための努力を、一般人の私だってしてる。


「それって誰から見てそう思われたいんじや?」
「え?」


 予想外の質問だった。ただ漠然と可愛くなりたい、キレイになりたいって思って。そうなったら似合う洋服だって増えてもっと素敵になれる。素敵になったら、仁王くんの隣だってもっと自信を持って歩ける。仁王くんが友達に自慢出来る女になれるかもしれない。仁王くんの鼻が高くなるかもしれない。あれ?


「仁王くんのため?」


 もちろん、自分が楽しんでいるというのも間違いじゃない。コスメを選ぶのはワクワクするし、ヘアアレンジに格闘する時間だって嫌いじゃない。洋服を見たりするのだけでも楽しい。だから、自分の人生を潤すためのひとつでもある。けど、同時に仁王くんに「可愛い」だったり「キレイ」だったりそんな風に思ってほしいために日々テレビや雑誌で輝く人に憧れを持っているのかもしれない。


「ほう」
「だって、仁王くんの周りにいる人ってなんか可愛い人とか多いじゃん」


 そう、私が仁王くんに可愛いと思ってもらいたい理由のひとつは間違いなくこれだ。仁王くんの周りには女の人が寄ってくる。それも可愛い人やキレイな人ばかり。今までテレビや雑誌だとか、特別な世界にいる人たちばかりを挙げてきたけど、今は街中にも女優さんやアイドル、モデルに劣らない人がたくさんいる。そして、仁王くんのところに集まる。そんな光景を見て、情けないけど少し焦っているのかもしれない。私よりも遙かに素敵な人たちに奪われてしまうんじゃないかって。


じゃろ?」
「え?何が?」
「俺の周りにいる可愛い人ってじゃろ?」


 彼が私の肌を撫でるだけで、ファンデーションで誤魔化した肌が艶やかに生き返る。潤いが足りなくてくちびるに乗せたリップグロスだって、彼のくちびるが重ねられればいつだって輝くのに。


「そそそそそ、そうじゃなくて」
は俺といる時が一番可愛いぜよ」


 彼が、私を可愛くキレイに、素敵にさせてくれてるのかもしれない。
 自分でも若干自覚はある。彼といる時がきっと私の一番の笑顔が生まれる時なんだって。一緒にいるだけで楽しいし、幸せを感じることが出来るから。だからきっと自然と笑顔になってしまっているんだと思う。多分、友達いる時とはまた違う笑顔。女を輝かせるアイテムのひとつはきっと大好きな人によって生み出される笑顔だから。


「今のままのも頑張っちょるも、俺の自慢じゃ」


 彼という存在が、私の全てを輝かせてくれる。




< ビジューの胸騒ぎ >





( そんなに可愛くなりたいんじゃったら俺がをもっと可愛くしちゃるぜよ )