「ペナル茶?」
「それってどっかで聞いたことあるっスね!」


 今日も暑い日の中、レギュラーは独自のメニューをこなしていた。マネージャーの私も手伝っている。そんな中、急に柳くんが変な色のドリンク を取り出して来たのだ。もうこの世の物とは思えないくらい不思議な・・・いや、変な色をしている。明らかに不味いということを物語っている。 っていうか臭いし。そんなに距離も近くないのにここまで臭うってどういうこと・・・。


「青学の貞治に作り方を教わった」
「ふーん」
「今日はこれを使おうと思っている」
「えー!?見るからに不味そうなんスけど・・・」
「赤也!飲み物を見た目で判断するな!」
「だったら真田副部長は飲めるんスか?」
「・・・・・・」
「そんなん飲めるのジャッカルくらいだろぃ」
「って何で俺なんだよ!」
「まぁ・・・効果はありそうですね」
「プリっ」
「これを飲みたくなかったらみんな頑張って練習するんだ」


 幸村くんがそんな感じでみんなをまとめていると柳くんがだんだんこっちに近づいてきた。うわっ・・・!余計臭うからやめて!というか 近づいてるのって私!?ななななな何で私に近づいてくるの!?私に関係ないよね!?とか何とか思ってたら柳くんが思いっきり私の前に立って そのペナル茶とかいうのを差し出してきた。


「え?」

「ななななな何?何で私の前に来るの?」
「飲め」
「!!」


 誰もが予想していたことが的中してしまった。柳くんは無表情で(いや、ちょっと笑ってるな)、私に受け取れと言っていた。周りのみんなも 憐れな目で見つつ、ニヤニヤしてるのがわかった(特に丸井くんと赤也くん!)。幸村くんなんかあのもう憐れな目どころか黒い笑みでこっちを 見て笑ってるし・・・!こういう時、助けてくれるのは紳士の柳生くんなんだけど、その柳生くんでさえも私と目を合わせないようにしている。 こうなったら頼るべきは私の大好きな仁王くん!仁王くん、助けて!・・・って思いっきり笑ってるし!


「ほら」
「ちょ、ちょっと待って!何で私が飲むの?」
「マネージャーだからに決まっているだろう」
「マネージャーは関係ないじゃん!」
「連帯感を感じさせるためだ」
「これ練習試合して負けた人に飲ませようとしてるんじゃないの?」
「そうだ」
「だったら私関係ないよね!?」
「毒・・・味見役だ」
「今、毒見って言おうとしたでしょ!っていうか何で私!?」
「もしレギュラーが飲んで万が一のことがあったら大変だろう」
「って!私は良いのっ!?」
「構わん」
「(ガーン)」
「仁王からの許可も貰ってる」
「何で仁王くんの許可!?っていうか許可しちゃったの!?」
「スマンのう、面白そうじゃったから」


 みんな酷すぎる。一応毎日頑張ってみんなを支えているつもりなのに。どうして私がこんなドロドロした未知の飲み物の毒見をしなきゃ いけないんですか。しかも仁王くん許可しちゃったってどういうこと!?私より面白さ!?みんなの期待するようなワクワクしてるような視線 が痛い。



「・・・わかったよ、飲めば良いんでしょ!飲めば!」
「おぉー。先輩、男っスね!」
「私は女!」
「男ならさっさと飲まんか!」
「だから私は女だって!見てわかんないのかよ!」
「さぁ、。飲むんだ」


 私はみんながギラギラさせている視線の中、その物体(もはや、飲み物なんかじゃない)を奪いとり、一気に全て飲み干した。周りからは 馬鹿みたいな歓声が上がる。みんな私の感想を待ってるようで私が何か発言するのを待っているみたいだ。しかし、生憎みんなが期待しているような 発言は出来ないかもしれない。


「味はどうだ?」
「ん・・・」
「勿体ぶらないで教えて下さいよっ」
「何か・・・」
「何か?」
「めっちゃマズイ・・・!!!!!」


 飲んだすぐ後はそこまで不味いとは感じず、みんなが思ってる程じゃないよー、と言おうとしたが無理だった。見た目のまんま激マズだった。 青学の部員たちは本当にこんなものを飲んでいるのだろうか。そりゃあ強くもなるはずだ。とにかく私は口を抑えて水道場へダッシュで向かった。 もう口の中を洗い流したくて仕方ない。洗い流すというか、この飲み物を飲んでしまったという事実を洗い流したい。不味すぎて涙さえも 出てくる。水道で口の中を洗ったあと、タオルを取りに行くために部室へ戻った。あの非情なレギュラーたちめ!いつか後悔させてみせるっ!





 口をタオルで拭っていると、部室に仁王くんが入ってきた。私を売った仁王くんめ!仁王くんのことは大好きだけど、今度ばっかりは私 だって怒る。私は反応したあと、すぐに顔を背け仁王くんの顔を見ないようにした。そしたら仁王くんは私の隣に座ってきて、頭を撫でてくれた(いやっ、撫でてきた!)。それ弱いの知ってるくせに・・・!私のご機嫌でも取るつもり!?そんなんじゃ私は騙されません!


、よう頑張ったのう」
「ふんだ」
「さすが俺の愛しの彼女じゃ」
「意味わかんないし。仁王くん、私のこと売ったようなものじゃん!」
「そんなことないけえ」
「面白くなりそうだと思ったんでしょ!」
「まぁ・・・それはそうじゃのう」
「(あっさり認めちゃうの!?)」
「大丈夫、責任は取ってやるけえ」
「え?どうやっ」


 話している最中に仁王くんにキスされてしまったのだ。今、部活中なのに・・・!というかここ部室なのに!しかも何か・・・深い! やばい、これは非常にヤバイ流れだ。このまま流されしまうような暗示のチューだ!仁王くんは何度も何度も絡めるようなキスをしてきた。 角度を何度も変えているのに、軽いキスは決してせず全てが深い。最初から深いキスなのだ。口の中、舌、歯までさえも舐められているようで。

「んっ・・・」


 苦しくなって息がもれると少し離してくれるのだけど、それは目も開ける暇さえも与えてくれないほど一瞬で。結局はまた口内を犯されて しまうのだ。仁王くんの舌が、私の口の中を一周するかのような冒険をしている。私も一応はそれについていこうと頑張るのだけど、仁王くんの 舌はそれさえも許さないくらいの勢いで攻めてくる。厭らしいと思われる音にもだいぶ慣れてきた。もうかなりの時間が経っただろうと思う。早くみんなのところに戻らなきゃ怪しまれる。 仁王くんのユニフォームを引っ張って合図をすると、ようやく離してくれた。おかげで私の口はでろでろに濡れている。それをまた仁王くんが 拭くように舐めてくれた(余計濡れちゃうんだけど)。


「な、何!?急にどうしたの?」
「ちゃんと口直ししてやったけえ」
「まさか責任取るってこういうこと」
「そうじゃ」
「・・・・・」
「幸村と柳が行ってきて良い言ってくれたぜよ」
「まさか・・こうなることを見通して私が飲むの許可したの!?」
「さぁ、それはどうかのう」
「・・・・・」
「今日はこのまま帰るぜよ」
「えっ!?」
「さっきの続きしないといかんじゃろ?」


 明らかに計算的な笑いをしている。まさか柳くんと幸村くんもグルじゃ・・・!まぁおかげであの不思議な飲み物を飲んだことなんて忘れて しまったのだけど。でも今度は、私が仁王くんに全てを飲み込まれてしまうような感覚を覚えさせられ、仁王くんにたくさん泣かされてしまった。 このことは絶対誰にも言えないだろう。でも仁王くんは翌日、柳くんと幸村くんに「なかなか良かっただろう?」「美味しかった?」と聞かれていた。






涙のペナルティ






(涙目のも可愛かったのう)
(は!?こっちはもう二度とあんな飲み物ごめんだよ!)
(そっちの話じゃないけえ、夜の話じゃ)
(うぅ・・・!仁王くんの馬鹿!)
(ある意味、参謀に感謝せんとな)