「決めた、私好き嫌いをなくす!」
「無理やろうなぁ」


 蔵の部活が終わるのを待っている間に考えたのだ。あまりに暇で図書室でボーっとしていたら、料理の本を 見つけた。食べることが大好きな私は自然にその本の写真のページに釘付け。食欲の秋ってわけじゃないけど、 これから寒くなってきたらお鍋なんかも良いなぁ。そんなことを考えていた。(暇すぎるとか言わないで!) そして考え出した1つの結論がある。これからの季節は美味しい食べ物が多い。つまり今以上に太る可能性がある・・・! これはマズイ。さらに最近肌荒れもしてきた。つまりバランスよく食事を取る必要がある。私は好き嫌いが激しいため、今までバランスを考えて 食事をしたことがない。だからこのままじゃ、ぶくぶく太ってブツブツになって・・・いつか蔵にフラれる!


「そんなのやってみないと分からないもーん」
「いーや、わかるって。今まで何回か挑戦してもダメだったやん」
「うっ」


 蔵の言う通り、私は今まで何回も「好き嫌いをなくす」宣言をしてきた。でも、いっっっつも失敗に 終わる。挫折する時もあれば、飽きる時もあるのだ。蔵はその度に「やっぱり無理やったやん」と言って、 もはや呆れるどころか笑うのだ。私は今回はそんな蔵を見返したいためにも頑張ると決意!


「ほな、今日からスタートやで」
「望むところよ」


 そう言って蔵は私を引っ張っていった。さり気なく手を繋いでくれてるのが嬉しかったり。蔵は私と一緒に 帰る日は徒歩の日が多い。なので、そのまま蔵が向かっていくほうに着いていった。 着いて行った先はファーストフード店。そのまま蔵が勝手に注文して、勝手にテイクアウトにした。え、ここで 食べるんじゃないの?私は蔵が何を買ったのかわからないまま「行くで」という言葉と同時に、また手を引っ張られ 着いて行ったのだ。どうやら、ここが目的地らしい。


「何で公園なの?」
が嫌がって食べるの遅かったら、店にも迷惑かかるやん」
「そこまで遅くならないし!」
「そんなんわからんで」
「フンだ。で、何食べれば良いの?」
「これや」


 蔵がにんまりしながら出してきたのは普通のハンバーガーだった。しかし、この普通に見えるハンバーガーは私にとっては 大問題である。私はこのハンバーガーに挟まれているピクルスとかいうヤツが大嫌いなのだ!前にデートで初めて食べた時に 、思わず口から吐き出して「何してんねん!」と蔵に怒られた(吃驚された)覚えがある。それから私は一切ハンバーガー という物を食べなくなった。ファーストフード店に行った時はポテトとか、そういった物を頼むようにしている。 蔵め、それを全部覚えててやってるな。


「えー・・・」
「さっき好き嫌いなくすって言うたやん」
「いきなりハードル高すぎるでしょう!」
「何言うてんねん!こんな小さいのやんか!」
「・・・はーい」


 蔵はご丁寧にもフォークを貰ってきてくれたらしい。こんなところで優しくされても嬉しくないって! ハンバーガーを分解してピクルスだけを取り出してくれた。そして、そのままフォークにさして こっちに渡してきた。いつもならカッコイイと思うその笑顔も、今日は悪魔に見える。絶対ちょっと 楽しんでるな!


「ほら、ちゃんと全部食べるんやで」
「・・・・・」
「あーん、してやってもええで?」
「バ、バカじゃないの!自分で食べてみせますー」
「2枚あるから頑張るんやで」


 そうは言ってもコイツ(ピクルス)・・・。かなりの強敵だ。しかも2枚あるというオプションつき。 私はゴクッとしながらフォークを持ち、見つめている。蔵は相変わらずニコニコしながらこっち見てるし! きっと食べないと今日は帰してくれないと思い、心を決めた!これも自分のため、蔵のため!パクっと 一口で食べたのだ。


「おぉ!えらいやん!」
「・・・・・・」
「味はどんな感じや?」
「・・・・・・」
?」
「まっずー」


 やっぱり前に口に入れた時と同じ不味さがした。どうにもこの味は私には会わない。前と同じように 吐き出そうかと思ったけど、蔵に「アカン!」と言われ頑張って飲み込んだのだ。もう、頑張ったよ私。 偉いよ、私。自分で自分を褒めてやりたい。さっき蔵もえらいって言ってくれたよね。だから良いんだよね。


「ほな次いこか?」
「えー!?」


 蔵は変わらずスパルタなのだ。もう嫌で仕方ないのに。だって私、涙目だよ!?それでもまだ、食べろって 言うんかい!?そんなの無理だよ、私。確かに「好き嫌いをなくす」って自分で言ったけどさ〜、ペースって いうものがあるじゃない。いきなりガーって行っても、成功するものもしなくなるんだよ!


「諦めるんか?」
「うぅ・・・そりゃあ頑張りたいけどさ」
「普通に美味いやん」
「あっ!」


 蔵は私が持っていた、フォークにささったアイツ(ピクルス)をぱくっと食べてしまった。・・・何だ かんだ言っても優しいんだからー!もうっ、蔵ありがとう!・・・って思って蔵を見たら、思いっきり 笑っていた。あ、この笑いは怪しい笑いだとすぐに気づいたけれど、もう遅かった。


「んっ・・・!?」


 蔵は私にそのままキスをしてきた。キスというか・・・口移しだ!やられたー!蔵の舌が私の中を みるみる侵略していくのだが、同時に不味い味が口の中に広がる。うぅ・・・でもキスは嬉しい。でも 何か微妙。人がいなくて良かったと本当に思う。ハッ!まさか・・・蔵は最初っからこれを狙ってて 公園に連れて来たんじゃ・・・!ようやく離してくれたんだけど、中にいるこいつ(ピクルス)をどうしようか。 どうしようかって言っても飲み込むしかないから飲み込んだ。


はやれば出来る子やと思っとったで」
「もう!何するのよ!」
「でも食べれたやん」
「そうだけど・・・」
の嫌いなもん、全部こうやって食べさせれば良いんやなぁ」


 蔵は満足そうな笑みをしながら、ご褒美だと言って私の頭を撫でてくれて、またキスをしてくれた。 今度はもちろん普通のキスで口直しをしてくれたのだ。でも、たった1日で私の「好き嫌いなくす作戦」は 終了した。





ピクルスマジック

(良い子にはご褒美もやらんとなぁ)




(過去拍手夢!2009/10/10〜2010/08)