この恋心をわかって下さい。なんてワガママなのは分かってる。 信じられない、とかそういうん じゃなくて。ただ、この想いを言わずにはいられなかっただけ。




「俺の事、信じられないの?」
「・・・」




いつもは優しい精市が、珍しく声を低くして私に問いただしてきた。何でこんな事になっちゃった んだろう。今日もいつものように私の家で楽しい時間を過ごすはずだったのに。ううん、私がの発言が きっかけでこうなったんだ。
精市は男女から人気がある。おまけにテニス部のマネージャーでもあるし。精市と付き合うことが出来たのは 嬉しかったけど、正直不安のほうが多かった。今もその不安は消えることがない。精市に迷惑とかを 掛けたくないから、今まで何も言わずに過ごしてきたけど、やっぱりもう我慢の限界で。精市に今までの思いや 感情っていうのをぶつけてみた。




「何か言ってくれないと分からないよ」
「・・・・・・・・・・」




本当は言いたい事がいっぱいある。聞きたい事がいっぱいある。でも怖くて聞けない。もし、余計な 言葉を発して、別れようとか言われてしまうのが、とても怖い。私にとって精市は、やっぱりとても大きな 存在になっていて、出来ることなら離れたくない。それを伝えたいのに、喉から声を出したくても出せない。 私の喉が言葉を拒絶している。




「だって・・・精市人気あるしっ」
「俺が好きなのはだけだって言ってるだろ?」




やっとの思いで出た言葉は主語とかそういうのが一切なくて、意味不明なものだった。でも、精市は 私の言いたいことを分かってくれたみたい。でも、そんな風に言ってくれたって、そんなに他の女 の子と仲良くされたら不安になっちゃうよ。部活も忙しくてなかなか会えないし。精市がみんなに優しいのは 分かるけど、私だって人並みに寂しいとか思ったりする。









いつもみたいに、優しい声で名前を呼ばれても、今は笑顔で答える気にはなれなかった。 下を向いてた顔を上げようと思ったけど無理だった。だって涙がポトポト落ちそうになるかと思ったから。 今、泣いたら余計に精市を戸惑わせるだけかもしれない。もしかしたら、ウザイ女とか思われてしまうかもしれない。 だから、私は無言で唇を噛み締めているしかなかったのだ。




、本当に俺の事好き?」
「え・・・?」
「何か、俺だけがのこと好きみたいだな」
「なっ・・・!」




その言葉には、嫌でも反応してしまった。むしろ逆でしょ?精市こそ、私の事好きなの?って聞きたい。 精市こそ、私を特別な女の子として見ていてくれてるの?その他の女の子と私の差って何?いや、こんなことが 聞きたいんじゃない。言いたいわけじゃない。
続きの言葉を発しない私に、精市はため息をついて「帰るよ」と冷たく言った。でも、今1番怖いのは、精市を失う事。




バフッ!っと去っていく精市の背中に向かって、思いっきりクッションを投げた。なかなか素直に なれないのが私の悪いところ。このままじゃ、絶対別れる事になる。このまま別れたくなんかない。 でも謝る事も出来ない。そう、ただの醜い嫉妬だから。




「バカっ!私は精市の事好きだもん!」
「・・・」
「私のほうがいっぱい好きっ・・・なのにっ」




途中から悲鳴っぽくなっていた。いつの間にか、ごく自然に涙が流れていて、泣きながら、涙混じ りに発した言葉が精市に届いたかは分からないけど、ようやく溜まっていた言葉を伝えることが出来た 気がした。




「あんまり会えないから不安なんだもんっ・・・」




ワガママだってわかってる。このことを言う事で、精市を苦しめてるかもしれない。それは 分かってる。だけど、今1番言いたいことをちゃんと言えた気がした。もう、プライドも何もかも 捨てて声を出して、子どもみたいにわんわん泣いた。別に泣いて引き止めようとか、同情を誘おうとか 思ってたわけじゃない。ただ、私の気持ちを表すかのように涙が出てくるだけだった。




の本当の気持ちが聞けて嬉しいよ」
「好きだからっ・・・不安になるんだもん」




精市は子どもをあやす様に、私を抱きしめて頭や髪を撫でてくれた。私はこの心地さがすごく好きだった。 精市が抱きしめてくれると、温かくて落ち着ける。でも、それでも私は泣きやまなくて。多分今は嬉しくて泣いているんだろうけど。




「これからはが不安にならないくらい一緒にいるから」
「無理っ・・・しなくていいっ・・・」
「無理なんかじゃない」
「だって・・・」
「俺だってと少しでも一緒にいたいと思ってるから」
「本当?」




精市はにこっと笑って、私の額に軽いキスをした。何故か涙はもう止まっていて。今度は唇にキスをくれた。






淡い想いの果てに


(不安にならないくらいそばにいるから)