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(赤司くんってどんな女の子が好きなんだろう・・・) (うーん・・・赤司っちとはあんまそういう話しないっスからね) (やっぱり可愛くてー頭が良くてースタイルが良くてー性格が良い子なのかな) (そうとは限らないんじゃないっスか(何せっちが好きなくらいだし)) (よし!まずは身近なところで勉強を頑張ってみようかな) (それは良い心がけっスね) (んー涼太くんはそんな頭良くないだろうから真太郎くんに教えてもらおうかな) (ひど!つか緑間っち!?) (だって私が知ってる中で一番頭良いし) (確かにそうっスけど・・・(不安)) 「というわけで私の頭を良くして下さい!」 「意味が分からないのだよ!」 授業終わりの休み時間、次の授業の予習と準備をしようと思っていたところに弾丸のように駆け込んでくるひとり の女に捕まった。こんなにうるさく俺の元へ来るのはだいたい二人に限られる。黄瀬かだ。二人とも、大抵忘れ物や宿題が分からないなどと言うときにやってくる。全く良い迷惑なのだよ。 01:ツンデレ緑間くんに 頭を良くしてもらう いつもよりやたらと丁寧に頭を下げて来る彼女に、やたらと真剣な様子を感じさせられた。確かの成績は中の中くらいだっただろうか。そこまで悪くはないが、もちろん良くはない。果てしない馬鹿ではないのだろうが、勉 強法が間違って成績が伸びないタイプだろう。勉強を教えてほしいと言われること自体は悪い気はしないのだが、 どうも何か企んでいるように思えて仕方がない。怪訝な目をして彼女を見ると、少しだけ肩を震わせた。 「もうすぐ中間試験も近いし勉強頑張ろうと思って」 「お前にしては珍しいな」 「え・・・そ、そうかな」 「・・・まぁ良いだろう」 理由はどうであれ、彼女の熱意はいつにも増して強いような気がしたので、今回ばかりは折れてやることにした。 人に教えるということで、自分の復習になれば良いと、その程度にしか思っていなかった。しかし、どこからか耳 障りな声が聞こえてくる。 「それ俺も良いっスか?」 「黄瀬・・・!いつからいたのだよ!」 「俺の存在感に気づかないとか緑間っちもまだまだっスね」 「馬鹿とは喋る気もしないのだよ」 黄瀬がいつの間にか彼女の後ろに立っており、ノート一冊を持ちながら俺のところまでやってきた。途端、周囲の 女子から悲鳴のような声が沸き上がり、耳が痛くて仕方ない。どうして黄瀬という人間はこうもうざいのだろうか 。おまけにそれが人にものを頼む態度か。せめて彼女のように丁重にやって来たのなら渋々受け入れなくもないが 、ヘラヘラと笑っているその顔を見たら、勉強を教えてやるどころか嫌気が差してきた。 「あの・・・僕も良いですか?」 「うわ!テツヤくん!びっくりした・・・」 「緑間くんに借りていた本を返しに来ました」 そして真打ちの登場とでも言うかのように、誰よりも影の薄い黒子が誰にも気付かれずに俺のところまでやってき た。相変わらず読めない奴だ。おまけにちゃっかりと自分まで会話に入り込んでくるところが憎らしい。黄瀬より は丁寧な頼み方だが、黒子のいきなりの登場に心臓が不意に激しい鼓動を立て、少し腹が立った。 「黒子・・・!お前もいつからいたのだよ!」 「さっきです。僕もちょうど分からない問題があるので教えてほしいです」 「わーい、皆で勉強して頭良くなろ!」 「じゃあ今日緑間っちの家に集合で」 「おい!」 何なのだよ、こいつらは。俺はまだ良いなんて一言も言っていない。それなのに肝心の俺の意見を全く聞かずに話 を進めていくだなんて、非常識にも程がある。しかし、彼女だけは俺の下から、小さな声で「ごめんね」と 微笑みながら言うので、許可をする気はなかったが「全く・・・仕方ないのだよ」と言って了承してしまった。その理由 は明確には分からないが、言葉通り「仕方ない」と純粋に思ったのだろう。 ****************************** 「広っ!緑間っちの家ってマジで大きいんスね」 「うるさいのだよ!静にしろ!」 「きちんと整理整頓されていて、まさに緑間くんの部屋という感じですね」 「こういう部屋なら勉強も捗りそうだよねー」 人の部屋に上がるなりわいわいと落ち着きがないなんて小学生か。部屋が綺麗なのは当たり前なのだよ。それとも こいつらの部屋は汚いのだろうか・・・想像するのも嫌なのでやめておこう。 三人を俺の向かい側に座らせ、早速問題集を解かせてみる。黒子はまだペンを走らせているほうであり、黄瀬はう んうん唸っていてうるさい。彼女はペンを激しく走らせたかと思えば消しゴムで勢いよく消したりと、苦戦してい る様子がうかがえた。その様子に流石に同情し、彼女が先程から間違っている部分を指摘すると、こちらが驚く くらいの笑顔で問題を解いていく。成るほど、人に何かを教えるのもそんなに悪くはない。そう、少しだけ思えた瞬間だ。 例え、横で黄瀬が「っちだけズルイっス!」と言っていようが気にも止めない。こいつ・・・バスケでは模倣 が得意なのに勉強はやっぱり模倣出来ないのか・・・と嘆きの視線を送りつつ、しかし黄瀬が赤点を取ると俺たち 帝光バスケ部の今後にも関わってくるのであまり放置は出来ない。全くもって面倒くさいのだよ。 「真太郎くん、終わった!」 「どれ・・・まぁ時間は掛かったようだが正解しているな」 「やったー!少し頭良くなった気がする!」 「単純なのだよ」 「でも、さんすごい集中力でしたね」 「うん、頑張った!」 「やっぱ恋する女の子は違うっスね〜」 「「え」」 黄瀬の軽い言葉が部屋中を一瞬シンとさせた。中でも一番固まっているのは彼女だ。恋する女・・・恋する女。 ・・・恋する女って何だ!?勉強を頑張るのが恋する女なのだろうか・・・? 「あ」 「りょ、涼太くん!!」 「まぁ良いじゃないっスか(どうせバレバレだろうし)」 彼女の顔が茹蛸のようにみるみる赤くなっていく。何をそんなに照れているのだろうか。ついには両手で顔を覆い 隠し、ワケが分からないが首ふり人形のようにひたすら首を横に振っている。すると、黒子の小さなクスという笑 いが漏れた。何なのだよ・・・!何が面白いというのだよ!? 「赤司くんですか?」 「え!?何で分かったの!?」 「まぁ・・・勘です」 「(黒子っちじゃなくても気づくっスよ)」 俺は「赤司」という単語が出て、ようやく思考が追いついたような気がする。なるほど・・・しかし、赤司に好意 を寄せるだなんてそんな女もいるのか。確かに悪いヤツではないが、少し癖があるというかあくの強いヤツでもある ので、そんな男を好きになるなんて彼女も相当変わっているな、と思った。 「そうなのか。それは大変そうだな」 「え、何で!?」 「赤司はああいうヤツだから自分のパートナーに求める理想も高そうだと思ったのだよ」 「うええええ、やっぱりそうなのかな?」 「いや、それはわかんないっスよ(っち以外にも気づいてないヤツいたんスね)」 「それで勉強を頑張ろうと思ったんですか?」 「う、うん」 俺には全く理解が出来ないことばかりだ。赤司を好きだということにも理解が出来ないが、その赤司に好きになっ てもらうために勉強を頑張ろうだなんてどうかしている。少し勉強したところで、彼女のレベルではあの赤司に追 いつくなんて不可能に近いだろうに。 「不純な動機なのだよ」 「良いじゃないっスか、別に!」 しかし、遠い、敵いそうにない目標を前にしても人事を尽くそうとしている彼女に少しだけ好感を持った。・・・ もちろん少しだけだが。そうか、一応彼女なりに努力しようとして今に至るのだな。些か方向性は間違っているよ うな気がしないでもないが・・・。 彼女はいつもマネージャーの仕事にも人事を尽くしている。それは赤司のためというわけではなく、 俺たち部員のためということもよく分かる。だからというわけではないが、少しくらいなら貸しを作っておいても良いと思えた。 「まぁ理由はどうであれ、これを貸してやっても良いのだよ」 「何、これ?」 「湯島天神の鉛筆で作ったものだ」 「え!コロコロ鉛筆!?」 「どれどれ・・・うわ!緑間っち、暇人〜」 「うるさいのだよ!まぁ・・・日頃マネージャーとして頑張ってる姿は認めてやらなくもないからな」 「緑間くん・・・ツンデレですね」 「あ、ありがとう真太郎くん!すごく嬉しい」 「教えた俺が恥じないくらいには成績を上げるのだよ」 「はい、真太郎先生!私、みんなの頑張りを無駄にはしない!」 あまり言われない礼の言葉を子供みたいな笑顔で言われると、案外こういうことも悪くないと少しだけ思えた。 ****************************** そして中間考査の結果発表がやってきた。俺はもちろん前から数えた方が早い。しかし、今回も学年1位の赤司には 残念ながら勝てなかった。ただ、分かりきってる自分の結果など今回ばかりはどうでも良い。彼女の順位を探そうと ひたすら結果が張り出されている廊下を歩いた。普段の彼女なら中の中くらいだが、今回は俺が教えてやったのだ。 もう少し前くらいにいるだろう。しかし、その考えは既に間違っており、彼女の名前を探し出すのに随分と時間を要した。 何故なら後ろから数えた方が早かったからだ。ちょうどその順位の周辺に、彼女と彼女を心配そうに見守る黒子と黄瀬を見つけた。 「あ、緑間っち。やっぱっちの結果気になったんスね」 「うるさい。それより、どういうことなのだよ?」 「体調でも悪かったんですか?」 「試験の日の朝、その日のお前のラッキーアイテムも渡してやっただろう?」 「緑間くん、面倒見良いですね」 「・・・これ」 「うわ・・・これは・・・」 彼女の返却された答案用紙を見た瞬間、一気に力が抜けそうになった。数学と英語の答案だけ、回答が一問ずつ全て ズレており、人生で見たことのない0点というものを生まれて初めて見せられたからだ。黄瀬が笑いを堪えている のが分かるが、俺は呆れるしかなかった。しかし、はぁと息を吐いたのも束の間。 「まさか俺らの中での成績が一番悪いとはね」 「あ、赤司くん・・・!」 「げ!(何で赤司っち・・・!)」 「赤司・・・(これは嫌な予感がするのだよ)」 赤司め、何故こんなところにいる・・・!自分は絶対に1番という自信と確信があり、更に自分の順位にしか興味がないと 思っていたのに・・・どうしてこんなところにいるのだよ!おまけに自分たちの中で一番成績が悪いということは、 俺たちの中で毎回のように下の順位にいる青峰や紫原やここにいる黄瀬よりも悪いということか。 「キャプテンとして全員の成績を把握しておくことくらい当然だ」 「!!(心を読まれたのだよ・・・!)」 「ひいいいいい!赤司くん、ごめんなさいいいいい!」 「緑間がに勉強を教えたみたいだね」 「そ、そうだが」 「全く・・・だからこんなことになるんだ」 「(うわ、赤司っちひど!つか一緒に勉強したこと怒ってる?)」 「あ・・・私が勝手に間違えて・・・」 「どうして俺のところに来なかった?」 「えっ・・・?」 「俺の方が緑間より頭も良いし上手く教えられるに決まっているだろう」 「確かに・・・それもそうですね」 「黒子ォ!何を言うのだよ!」 それもそうか、と少しだけ納得したくなった。が、納得して良い場合ではない。何なのだよ、この俺を責める空気 は・・・!赤司のヤツ、何故俺をそんなに睨んでいる・・・! 「次は緑間なんかのところじゃなくて俺のところに来ることだね」 「う・・・うん」 「それから三人は・・・分かってるよね?」 「(赤司くん、怒ってますね)」 「(試験明けの練習地獄っスよ)」 「・・・・・」 の頭を良くしてやろうと手伝っただけで何故こんなことになるのだよ・・・! Back * TOP * NEXT |