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「りょりょりょりょりょ・・・!」 「え、え、え?どうしたんスか、っち。そんなに慌てて」 「デデデデデデデッッッッッッ」 「いや、全然わかんないスから。はい、落ち着いてー息吸ってー」 「ふー・・・よし!あ、あのね」 「どうしたんスか、そんな興奮して」 鼻息が荒い、と女の子に言うのは失礼だと分かっていながらも、その表現が一番適切なんじゃないかと思うくらい 、今のっちは興奮していた。休憩中の俺に勢いよく飛び込んで来たくせに肝心な言葉は勢いよく出ないらしい。そんな様子が何だか可愛らしく て、彼女の口から言葉が出るのをゆっくり待つ。 「あああああ赤司くんとデート・・・!」 03:絶対的権力者赤司様とデート? 〜With〜桃黒青黄の尾行劇 「・・・うええええええ!?赤司っちとデート!?」 「うわぁ!声が大きいよ!」 「あ、ごめん。で、何でそんなことになったんスか?」 「さっき赤司くんが『今日の帰り、備品を買いに行くからもついてこい』って!」 「・・・それデート?」 「いいの!私にとってはデートみたいなもんなの!」 「まぁっちが良いなら良いんスけど」 「でね!何かアドバイスちょうだい!」 彼女は両の拳を握り締めながら、未だに興奮が落ち着かないと言った様子で、時折頬を赤らめて照れながらも嬉 しそうに喋る。そんな風にされたら、こっちだって純粋に応援したくなるし、微笑ましいなぁと見守りたくなる。 「何もないっスよ」 「え・・・」 「デートで色々気遣ったりするのは男の役目っス。女の子は隣にいてくれるだけで嬉しいもんなんスよ」 「・・・涼太くんがモテる理由がまた改めて分かった気がする」 まぁ今回のはデートじゃないかもしれないけど、彼女からしたらそうなんだろうし。赤司っちだって一人で事足 りる・・・っていうかそんなのマネージャーの誰かに頼めば良いことだし。おまけに数人いるマネージャーの中か らわざわざっちを選んだんだからそういうことだろう。それに赤司っちは彼女限定かもしれないけど、紳士的 なところもあるだろうし、何よりキャプテンをやって皆を引っ張っているくらいだから、特に何も心配することは ないはず。 「わ、分かった!じゃあ一心不乱で頑張るね!」 「(ちょっと不安だけど)」 そんな感じでテンションが上がったのか、部活が終わるまで彼女はいつもより張り切ってマネージャー業に勤し んでいた。 そして練習が終了し、いよいよっちの一世一代の勝負が始まる。何だか見ているこっちまで緊張が伝染しそうだ。それに何より・・・超気になる! 「黒子っち、青峰っち!」 「どうしたんですか、そんなに興奮して」 「二人とも暇っスよね?ちょっと俺に付き合ってくんないっスか?」 「暇じゃねーよ!」 「そんなこと言って〜。ほら、行くっスよ!」 「行くってどこにですか?」 「テツく〜ん、一緒に帰ろ!」 「あ、桃っち良いところに!桃っちも一緒に行こ!」 「え、行くってどこに?」 「っちと赤司っちのデート!」 そうして俺達四人は彼女と赤司っちのデートの尾行を始めた。校門前でソワソワしている彼女の様子から、今の心 境が容易く読み取れた。微笑ましい・・・俺と桃っちはそんな様子で内心少しウキウキしながら様子を見守ってい た。黒子っちも青峰っちも何だかんだ言いながらついてきてる。 ようやく赤司っちが来ると、まるでご主人様を待っていた犬のように喜びをあらわにする彼女の様子が見て取れ た。尻尾がついていて、その尻尾をブンブンと降ってるような気さえしてくる。 「待たせたね」 「ううううう、ううん。ままままままま待ってないよ」 うわ、緊張MAXじゃん。見ていて面白いけど、あんなに緊張しっぱなしじゃっちが楽しめないんじゃないかと 可哀相な気がしてくる。何とかして緊張を解いてあげたいけど・・・こればっかりは本人が乗り越えないとなー・・・ 「ちゃん、緊張してて可愛いね」 「あいつ俺にはおっぱいおっぱいってぐいぐい来るくせに何であんなオドオドしてんだよ」 「そりゃあっちからしたら大好きな赤司っちが隣にいるんスから」 「さんを見ていると何だか微笑ましくなりますね」 お、歩いた。え!?っちの歩き方変・・・つーか・・・うわ、そっか。同じ方の手と足が一緒に出ててロボ ットみたいになってんだ!・・・青峰っち爆笑してるし。赤司っちは一歩前歩いてるから気づいてないし。いや、 気づいていながら一人で楽しんでそうだけど。 でも、彼女のそんな緊張も歩くにつれて薄くなっていったらしく、ようやく手足が戻り、普通に歩けるようにな っていた。その間、赤司っちと彼女の距離は一定を保ったまま変わらない。俺たち程じゃないけど、赤司っ ちはっちより背が高い。そんな彼が彼女に歩幅を合わせて歩いてるのはやっぱり彼女だけに見せる優しさな んだろうなぁとぼんやり思った。・・・当人の二人ともそんなことに気づいてないだろうけど。 「会話ねーな」 「緊張してるんですよ」 「でもこのままだと、会話ないままお店に着いちゃうよ?」 「ちょっと青峰っち、っちに絡んで来て下さいっス」 「はぁ?」 「このまま平和に終わったらつまんないじゃないっスか」 「黄瀬くん・・・楽しんでますね」 「そういう役なら青峰くんが適任かも!」 「馬鹿か、お前ら。すぐバレんだろうが。・・・それに赤司が牽制してるって気づいてねぇのかよ」 青峰っちのこの言葉に俺達三人はもう一度赤司っちをよーく見た。そして赤司っちの視線の先は大抵俺たちと同 じ学生や若い人へと向けられている。割と賑やかな街で、若い人も多くいるこの場所。若い女の子なら特にナンパ だったりセールスだったりスカウトだったり声をかけることが多いだろう。俺だってよく声をかけられる。 っちは桃っちに隠れてなかなか目立ちにくい存在だが、今時の可愛らしい女の子だ。何より・・・隙だらけ! 失礼かもしれないけど、何も疑うことなく相手についていってしまうような性格だ。前にみんなで川に遊びに行っ た時、青峰っちに「良いモンやる」と言われて手を差し出したっちの掌には大きなザリガニが乗っていた。 いきなりのことでビックリしたらしいっちは悲鳴を上げ、涙目になっていた。そんな彼女の姿を見て、赤司っ ちと緑間っちが青峰っちをひどく叱っていた気がする。そんな単純な女の子だ。赤司っちがアンテナを張るのもよく分かる。 「あ、お店入ったよ!」 「ああ、うちの部ご用達のバスケ専門ショップっスね」 「んだよ、本当に備品の買い出しに来ただけじゃねーか」 「でも、さん楽しそうですよ」 「お店あんま広くないからこれ以上みんなでつけるの難しいかも」 「うーん・・・そうだ!黒子っちがいる!」 「え・・・まさか」 「そのまさかっス!黒子っち、お願い!こういうときこそのミスディレ!」 「いや、違います」 俺は懇願する勢いで頭を下げた。桃っちもやはり気になるのか同じ雰囲気を出している。青峰っちはマイペース に「バッシュの紐でも買うか」なんて言っているので、俺と桃っちで必死に止めた。黒子っちも気にならないと言 えば嘘になるのか、それともっちに幸せになってほしいからなのか。渋々と言った感じだが首を縦に降ってくれた。 「つか、どうせ赤司には俺達がつけてることバレてんだから良くね?」 「「え」」 「僕も赤司くんは気づいてると思いますよ」 「「ええ!?」」 「むしろあいつが気づかない方がおかしいだろうが」 「じゃあさんには気づかれないように気楽に行ってきますね」 何と!けど、二人の言うことも何となく分かる気がする。そう思うと俺達もついていきたい・・・けど、俺と 青峰っちと桃っちじゃ、あの広くない店内では嫌でも目立ってしまうだろうし。まぁっちは俺達がいるなんて微塵も気付いてないだろうけど。仕方ないから大人しく外で待つことにする。 ******* しばらくして黒子っちがようやくミッションを果たし戻ってきた。あの二人は一体どんな会話をしてどんな風に 楽しんでいたというのだろうか。正直俺からしたら赤司っちと買い物なんて全く想像がつかない。てか、それ以前 に会話はあったのだろうか。 「どんな風って・・・普通でしたよ」 「普通!?普通ってどんなっスか!?」 「ああ、でも赤司くんがあんな顔するんだという感じはしましたね」 「それってちゃんの前だからってこと?」 「多分そうだと思います。優しく接してましたね」 「怖ぇー・・・」 「うわ!超見たかった!例えばどんな感じっスか!?」 「うーん・・・まずカゴを持っているさんの手からカゴを奪って『持つよ』と言ってるのも意外でしたし、『え、でも、そんな』って申し訳なさそうにしているさんに『じゃあこれを持っておいて』って赤司くんが渡したものは、今日書くものが書かれていたリストの紙でした。赤司くんって意外と人を気遣うところがありますけど、あんな優しい顔しながらなんてビックリしました。あと、リストにはありませんでしたがさんがずっと欲しがっていたらしいドリンクの粉「これで貴方もマッスル!?超ムキムキ促進剤!」というものを買ってもらってました。・・・絶対要らないでしょうけど。でも部費からではなく赤司くんの財布から出していたみたいです。さん自身は部費からと思っているみたいですが、桃井さんや他のマネージャーの人にも反対されていたそうですし、その粉を買うことに対して『い・・・良いの!?』と喜びながら驚いてる感じでした。それから、プロ選手のサインや写真があるのを見て、さんが目を輝かせながらはしゃいでました。隣に赤司くんがいることを一 瞬忘れてしまったのでしょう。飛んだりして、赤司くんの袖を掴んで『すごいね!』と興奮したようですが、それが改めて赤司くんだと気付き、一気に顔を赤くさせてました。恥ずかしいと思ったのか『ご、ごめんなさい』と言ったさんに対して赤司くんは笑いながらさんの耳元で何かを囁いてました。聞こえませんでしたが、あの唇の動きから察するに『可愛い』と言ったのだと思います。さんがビクっとしてより赤くなってましたし。お会計したあとの荷物も赤司くんが持ってあげていました。最後に赤司くんと目が合ってしまい、思い切り何かを含んだような笑みを向けられました。怖かったです」 全然普通じゃない!・・・ツッコミどころ色々あるけど、とりあえず黒子っち探偵になれるっスよ!だなんてはしゃいでいると、買い出しをした 袋を持つ赤司っちとっちが出てきたので、俺達はまた急いで隠れた。 「あ、赤司くん。ごめんね、私ついてきたのにあまり役に立ってなくて」 「そんなに自分を卑下しなくて良い」 「(ヒゲ?)は、はい」 「それにしてもには良い友人がたくさんいるみたいだね」 「え?」 「いや、更なる頑張りを期待している」 「え?え?・・・うん(マネージャーのこと?)」 「もう遅いから家まで送るよ」 うわ!俺も目が合った・・・!青峰っちと黒子っちの言う通りやっぱりバレてる・・・!そして思いっきり微笑 まれた!コワイ!・・・俺達四人は立ち尽くしたまま同じことを考えてるようだった。 「そ、そろそろ帰るっスか」 「そ、そうだね」 「お前ら結局何がしたかったんだよ・・・」 「でも、二人の微笑ましい姿も見れましたし良かったんじゃないですか?」 「黒子っち、それポジティブ・・・」 それに今まで何となく思っていたことがひとつ確実になったこともあった。それを踏まえて今後どう動くか。 とても大事な気がする。 Back * TOP * NEXT |